ぽかぽかと地を照らすお日様のように温かく周りを照らす芥川先輩が大好きで仕方がなかった。正直、恋なんてすることないと思っていた。興味がなかったと言ってもいいかもしれない。かっこいい男の子がいたって私はただかっこいいなと思うだけでそれ以上の感情は生まれなかった。今までずっとそうだった。なのに恋をしてしまった。芥川先輩のあのお日様のような笑顔を見た瞬間胸が騒いだんだ。今までにない新鮮な感覚、新鮮な感情だった。初めての思い。あんなにどきっとしたのは芥川先輩だけなんだ。一目惚れだったと思う。それから気が付けば芥川先輩のことを考えてて、胸がきゅーと締め付けられたり、あの笑顔を思い浮かべては嬉しくなったり、切なくなったり、意味もなく泣きたくなったり、声を聴いてはいちいち反応して胸が弾んで。くるんとはねている髪も可愛い寝顔も無邪気に笑う芥川先輩がいちいち思い浮かんで泣きたくもないのに目に涙が溜まる。触れたくて堪らないのに触れられなくて。会話してみたいのに出来なくて。胸の奥がきゅーと苦しくなって、苦しくて苦しくて仕方がないんだ。大好きな気持ちと苦しい気持ちのふたつに胸が押し潰されてしまいそうで恐い。でも不思議と苦にならない。それは嫌にならないんだ。芥川先輩を思うことで私は幸せを感じでいる自分がいる。そう、これは私が芥川先輩に恋してる証拠。私の初恋なんだ。可笑しいと思うぐらいに大好きで欲張りな私は好きだけじゃ物足りなくて、芥川先輩の近くにいたくて、憧れじゃ埋めきれなくて、芥川先輩の一番になりたいと思ってしまうんだ。だけどそれは叶うことがなくて寂しさだけが残る。でももしも今、そういう関係になってしまったら私はきっと泣いてしまうんだろう。


「慈郎先輩ってポッキーが好きなんだって」


ある日そんな情報を耳にした。そんなことを聞いてしまった私は学校の近くにあるコンビニでポッキーを購入。でもそのポッキーは芥川先輩にあげるためのものではなく、ただ芥川先輩が好きだからという理由で買ってしまったんだ。そんなものまで買ってしまうほど大好きなんだろうなと。そんなポッキーを鞄の中に入れて学校へ向かう。ぽかぽかと地を照らす太陽、少し温かくなった春の風を感じては芥川先輩を思い出してしまう。そしてまた嬉しくなって苦しくなって。そんな馬鹿みたいに無限ループしてはどんどん芥川先輩のことが好きになっていく。芥川先輩からして見れば私はただのひとりの女の子かもしれない。でも私が見る芥川先輩は太陽のように大きな存在。芥川先輩を思う気持ちはこの学校の誰よりも強いと思う。大好き過ぎてでしょうがない。この気持ちはもうどうすることも出来ないのだ。


どたっ。


それは芥川先輩を思っているちょうどその時だった。誰かにぶつかってしまった。運悪くも鞄が開いていたらしく鞄の中身が床に広がってしまった。私は慌ててごめんなさいと謝ってその人の顔を見たんだ。すごく驚いた。すごく驚いたんだ。そして初めて彼を見たあの時と同じぐらいに胸が騒いだんだんだ。ぶつかった相手は芥川先輩だった。


「い、たたた」
「あ、あの、あ…」


言葉が出なかった。上手く喋れない。声が震える。頭が真っ白になって何も出来ない。ただどうしようどうしようと焦ってしまっていたんだ。まともに芥川先輩の顔が見れなかった。


「あ、あの…」
「あ、ごめんね、あっ!これ、新作のポッキーだー!」
「え、あ、」


芥川先輩が手にとっていたのは先程私がコンビニで買ったポッキーだった。あのお日様のような満面な笑みでそのポッキーを見つめていた。そして胸がきゅーとなったんだ。


「いいなーいいなー」
「あ、あのそれ、あげましょう、か?」
「え、いいの?」
「あ、はい」
「マジマジ〜うわああ、嬉Cー!君優Cーね!マジ、ありがとう!あ、じゃあこれお返しに、んーと、あ、ポッキーしかない…これと交換でもいい?」
「あ、はい!」


芥川先輩が交換と言って私に差し出したのは普通のポッキーだった。それが私はとにかく嬉しくって嬉しくって堪らなかった。


「あ、ありがとうございます」
「いや〜俺こそありがとうだCー!あ、それとごめんね」
「いえ、こっこちらこそ」
「あ、じゃあもう行くね!えへへ。マジ、ありがとう!あ、君の名前は?」

なんて聞くもんだから慌ててながらも私の名前を伝えるとまたにこっと笑って、じゃあ、またね。と。

すごく嬉しかった。夢のようだった。そしてまたさっきのことを考えるとまた胸が苦しくなった。ポッキーを交換した時にちょっとだけ触れた手が少しだけ熱くなって震えていた。交換したポッキーを眺めてやっぱり私は芥川先輩のことが大好きでしょうがないんだなと改めて感じた。




もっと知りたい。会話したいな。

(120314)

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