「りんごー」

「ごま」

「マスクー」

「くま」

「まんじゅうー」

「うま」

「………兄ちゃん」

「ん?」


ななしと手を繋いで歩いていると「しりとりしよう!」と笑顔で言われた。断る理由などないので、一度抱き締めてから、こちらも笑顔で頷いた

しりとりの醍醐味と言えば、言葉の最後の部分を同じにして相手を責めることだろう


ななし相手にやることではなかったが…まぁ、好きな子ほどってやつだな


そんなおれの攻撃に、未来の嫁さんは不機嫌そうに頬を膨らませている。もうやだ、なにコイツ。かわいいんだけど。ちくしょうめ、知ってたよ


あーもー…

その膨らんだほっぺたつついて、頬擦りしてぇー





「兄ちゃんのバカ」

「ワリィワリィ」

「さっきから二文字の言葉ばっかり」


えっ?そこ?


「もしかしてつまんない?」

「あ、いや…んなわけねぇって。たまたまだよ」

「ホント?」

「おう」

「じゃあいいか。んーと、『ま』だよね」


そう言って「ま…まぁー…、」と口を尖らせながら考え出した

一生懸命考えているのだろう、こちらを見ることなく唸っている





……よかった

ななしがこっち見てなくて、本当によかった


今のおれの顔、絶対ゆるゆるだわ



笑った顔、不機嫌な表情、少しズレた考え、悩んでいる姿…

ななしの全てがいとおしい


女なんか…って思ってた頃のおれに、今すぐその考えを捨てろ、と言ってやりたくなった。そして直ぐ様この子を見つけろ、と叫んでやりたい


つーか、いろんなものが抑えきれないから、今すぐここで叫びたい。どんな言葉でもいいから叫ばしてくれ。じゃねぇとななしが危ない


脳内で激しく戦う己の理性と本能が静まることを願っていると、言葉が思い付いたのかななしが顔を上げてしまった


「ましゅま、ろ…」

「ろ?…『ろ』かー」

「え、あ、兄ちゃ…」

「ん?」










「鼻血、出てるよ…!?」


…………おっと、戦いの傷痕がこんなところに





「大丈夫、ななしへの愛が止まらなかった結果だからコレ」

「………?」

「ティッシュ詰めるからちょい待ってろなー」

「…あ、私が詰める!」

「おれの愛(鼻血)が止まらなくなるからダメです」





溢れ出す