「ぶえっくしょい!!」

「うわ!きったねぇなぁ…!」


盛大にクシャミをすれば横から文句が飛んできた。「移すんじゃねーぞ」と言うキバに適当に返事をし、ティッシュを取り出す


「風邪引いて、ななしさんもいなくなって、シカマル大変だね」

「おー…、ホントだよ」


あ、ティッシュ足らねー


垂れる鼻水に困っているとチョウジが「はい」とティッシュを手渡してきた。サンキューな

止まらない鼻水と戦いながら、午後の授業に備える


「ななしさんいないって、なんかあったのか?」

「明日から修学旅行なんだって。三泊四日」

「あー、それはそれは」


お可哀想に、口には出さないがキバが目でそう語ってきた。腹が立ったのでとりあえず脛に一撃くれてやる


「でもさぁ、風邪なら今日休めばよかったのに。なんで来ちゃったの?」

「んー、なんでだろうなー」


重く、働かない頭に視界がぐわんぐわん揺れる。確実に朝より悪化していた


しかし、これでいい


「これで、いいんだよ」

「え?」


不思議そうに首を傾げるチョウジにニッと笑みだけを返した





その日の午後は移動教室もない楽な授業だったが、とても過酷な数時間だった。もー、しんどい

帰宅した後も母ちゃんに怒られながら自室に倒れこむ。今すぐ眠りについてしまいたかったが、ここで寝てはせっかくの計画がパァになっちまう


部屋の時計を見て、そのときまで寝ずに待つ



今夜は暑いが、クーラーを付けるほどではない。多分網戸になっている、はず

ここで閉まっていたら、この働かない頭で侵入方法を考えなければならない


まぁ、その心配も無駄に終わったけどな


「よい、しょっと…」


柵や木を使い、二階の窓に手を掛ける。たどり着いた先にはかわいらしい寝顔の彼女がいた

起こさぬよう部屋に侵入し、荒い呼吸を調える。ちなみに興奮してるわけじゃねぇぞ。風邪のせいだから、これ


ななしの部屋には小さな荷物がちょこんとあった。大きな荷物はもう、向こうに送ったのだろう


「ごめんな」そう呟くも返ってくるのは小さな寝息のみ。どうやら熟睡中のようだ


こうなったななしは、中々起きねぇ





「すー…、」

「はぁ、…っななし」


最初に言っとく

マジで、マジでわりぃ


せっかくの修学旅行だけどよ



「っん…ぅ、」


行かせらんねーわ


息苦しさから無意識に逃げようとするななしを押さえつけ、深く深く口を付ける。彼女が起きないよう、ときどき酸素を与えながら





「ぅ、ふ……っはぁ、ぁ…」

「…………っ」


うっわ、エロすぎ…


赤い頬に、短く繰り返される呼吸

ふらつく視界はきっともう、風邪だけが原因ではないだろう


本当はこの風邪をななしに移して、修学旅行を阻止するのが目的だったのに


「……………ま、端からわかってたけどよ」


こんな状態でこんなことして、止まるわけねー


小さく笑いをこぼし、この行為を何度も何度も繰り返した





奪う