「今日もつぼみちゃん家行くの?でもつぼみちゃん風邪引いちゃったらしいから止めときなさい」


母からの言葉に体を震わせた彼は、全力で里を駆け抜けた













風邪だと自覚したのは今朝のこと。先日から喉に違和感を感じていたが、ここしばらく健康だったため気を抜いていた…うぅ、しんどい


咳き込みながら自身の額に手を当てる。幼い頃からあまり風邪を引かない彼女だが、一度引くとまともに動けなくなる。本来なら誰かに看病をしていただきたいのだが、生憎父であるサンは今朝泣きながら仕事に向かって行った。お父さん、お仕事がんばってねゲホゴホ。看病はお母さんにしてもらうよ





............って言いたかったんだけど


「ねぇぢゃぁぁぁあ!!ぅあああ...!ねぇ、ちゃ......っ!!!」

「...本当に大丈夫なのぉ?」

「うん...しんどいけど、寝てるだけだから...それに家いるとヒマくん部屋に入って来ちゃうでしょ?」

「ねぇちゃ、ねぇちゃあ...!」

「そうなのよねー...」


だから少し出掛けて来ていいよ、っていうかそうしてきて。アカデミーでそろそろテストがあると言ったいたので、ヒマワリに移してしまったら大変だ。てか、ヒマくん一旦落ち着こうか。お姉ちゃん死なないからさ

そう母に言い聞かせ二人を外出させたのが昼過ぎのこと。そのとき飲んだ薬が効いてもいい頃なのに、私の病態は今以上に悪くもならないが良くもならない


はて、私はこんな病弱だっただろうか

以前の体は元気もりもりだったぞ?んん?


風邪を引いてもベッドに寝たきりなんてことにならなかったが、この体になってからは毎度寝込んでいる

毎度のこと、ではあるが



...あぁ、不安になる、なぁ


外はまだ太陽高く、明るいというのに

どうしてこう、気持ちは沈んでいくのか


自分の咳き込む声を聞きながらふと窓を見ると鍵がかかっていなかった。そのことに気付いた私は、フラつきながらも体を起こし窓に手を伸ばす


風邪はあまり引かないけど、

引く度こう、死にそうになって、

大人のくせに...あ、大人だったくせに、

泣きそうなって、不安になって、


そのたびに、









だんっ


「っつぼみ!」

「...やぁ、こんにちはー」


その度に、キミはすっ飛んできてくれるもんだから...だから私はこうして鍵をかけるのですゲホゴホ、ゴホ





窓の鍵をかけた瞬間に現れたシカマルくんにへらりと笑いかけた。窓越しに見る彼も昔は弟と同じように泣きじゃくっていたなぁなんて思い、体を起こしたまま彼を見つめる。

そして気付く

不安そうに眉を寄せこちらを見つめる彼の目に、うっすらと涙が溜まっていることに


「シカマルくんやい、泣かないでよ」

「じゃあ風邪引くな。てか、開けろ」

「え?...ふへへー」

「笑うなよバカ。...また一人なのかよ」

「ヒマくんが部屋に入って来ちゃうからねぇゲホ」

「...つぼみ、開けて」

「ゲホゴホだめ、ケホッです」


あ、不貞腐れた

あはは、かわいいなぁ


「風邪が移るから、中に入るのはダメですけど、」







窓越しでいいので、そこにいてくれると

お姉さんはとても嬉しいなぁ、なんて




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