母ちゃんに息子の面倒を任せられたのが今朝。正直言って今日は勘弁してもらいたかった

すやすやと気持ち良さそうに寝る自分の子供。今目を覚ましたらどうなるか…、最近任務ばかりで構ってやれてなかったので不安しかない


このまま寝ていてくれることを祈りながらシカクは戸を叩いた







「あっシカクさん、こんにちは!どうしたんですか?息子さんも一緒で」

「いや、ちょっとな」


家から出てきたのは後輩のサン。忍として優秀な奴だが、どうも任務以外では抜けている

いつか任務の方でもやらかすのでは、そう思ったシカクは可愛い後輩のためにわざわざ足を向けたのだ。………だから決して彼自慢の「綺麗な奥さん」を見に来たわけではない。断じて違うのだ


「まぁ、立ち話もあれなんで中にどうぞ」

「おぉ、悪いな」

「オハナー、すまんがお茶を用意してくれ」

「はーい」


サンの言葉に可愛らしい返事が返ってきた。声を聞く限り"オハナ"さんはべっぴんさんだろう

自身も綺麗な嫁さんがいるが、気になるものは気になる


座布団に座ったシカクは耳を人の気配のする方へ向けた、瞬間





ガシャーン!!!


「オ、オハナー!?」

「だ、大丈夫よー…お茶っぱ探してるだ、」


どっしゃん、がらがら…


「オハナァァア!!」





「………………」


いかん、この夫婦はいかんぞ


台所であろう場所から聞こえてきた騒音。後輩がダッシュで彼女のところ向かっていった

しかし、途中に散乱した調理道具を踏み、見事転んでいる(おま、忍としてダメだろそれ)


夫婦揃って抜けてるのか……(見てないが多分)べっぴんでもこれじゃあなぁ


少々キツイところもあるが、何だかんだで自分は妻に恵まれていたんだな、と再確認できたシカクだった





「おいサン、大じょ、」

「…ぁう、」

「う、ぶ…………か」


相変わらずてんやわんややっている台所の二人。助けてやろうと腰をあげたとき、腕の中のあいつが起きた

ゆっくりと視線を下ろすと、重なった目線。息子の目には涙が溜まっており、これから起こるであろう惨劇にシカクも泣きたくなった





「う゛、あぁぁぁあぁあああん!!!!」

「え、シカクさん!?大丈夫で…ちょ、オハナそこ危なっうわぁぁあ!」

「きゃあああ!アナタごめんなさいー!!」

「ぶわぁぁあぁあ…!!」

「……ッ!!」


何一つ大丈夫じゃねぇ…!!


後輩の家が戦場に変わった。しかも相手は強敵と来たもんだ

自分が敵を絞め殺す術しか知らないダメ親父と理解。これからはもっと積極的に子育てに関わろう。すまん、母ちゃん


シカクは息子の背中を優しく叩きながら遠くを見つめることしか出来なかった



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