「ヒマワリ、なんてどう?」


理由も添えて二人に言ったら、お父さんが泣き叫びながら外へ飛び出していってしまった。そんなに名前、気に入らなかったのか


確かに女の子のイメージがある、気がする

前世の記憶がある私の脳内にとある漫画が浮かんでいた(いや、パクったわけじゃ…)



「…ふふふ、」

「かーしゃ?」

「そんな心配しなくても大丈夫よー、お父さんのあれ、嬉し泣きだから」


まじっすか。よくわからない雄叫びもあげてたんですけど


しかし喜んでもらえたのならこちらも嬉しい

隣に座るお母さんが「ヒマワリくーん、早く産まれてねぇ」と言いながらお腹を撫でている。どうやら名前はヒマワリで決定のようだ



「………ッと、ぅしゃ!探してくる!」


なんだか照れくさくなったので、逃げることにした


「はいはーい、多分奈良さん家じゃないかしら」



「気を付けてねー」と笑顔で送る母に手を振り、つぼみは奈良家に足を運んだ

これでサンがいなかったらもう当てはないのだが







「っふ、う゛ぅぅうぅ…!!」

「な、泣くな泣くなっ!」



「………………、」


はい、ビンゴ!


予想通りだった。しかもどうやらご迷惑をかけているらしい。いけない、早く回収しなくちゃ

「ごめんくだしゃーい!」と大きな声をあげながら戸を叩く


しかし、誰も出てこない。聞こえてないのかな…


もう一度叩くも、また反応がない、というかサンの泣き声しか聞こえないため、つぼみは静かに戸を開けた





「………とーしゃ、」

「ひぐっ…うぅ……あぁ、つぼみがいるぅぅう……」


いるぅぅう、じゃないよ!どんだけ泣いてるのさ!


目を真っ赤に充血させている父のもとに歩いていき「めーわく、かけないの!」と注意をするも、嗚咽ばかりで聞いているかもわからない

そんな父に呆れ、とりあえずつぼみはシカクに頭を下げた


「勝手にお邪魔してしゅいましぇん」

「え?あ、いや…こっちこそ気づかなくてごめんな」


そう言ってシカクはつぼみの頭を撫でた。いやー、本当、気づかなかった。ショックのあまり

将来有望すぎる息子に期待していいのか、しない方がいいのか

微妙な気持ちで枕を抱き締めるシカマルの頭も撫でてやった。そしてハッとする


おい、こいつ…





「シカマルくん、こんにちはー」

「……………、」


目の前につぼみちゃんがいるのに、飛び付かない…だと!?


息子のあり得ない行動にシカクは座ったまま後ずさった。そしてつぼみに挨拶を返さなかった息子に二度驚いた

シカクのこの行動につぼみは首を傾げる。あの、え、どうかしたんですか。不思議に思うも見たことない顔をしているため、つぼみは声をかける勇気がなくなった


視線をシカクに向けたまま、彼女の手はシカマルの頭に伸びていき





ぺちっ


「………えっ」

「………………、」


そして叩かれてしまった。誰に?つぼみ大好き!なシカマルに

衝撃的なこの出来事にシカクは口をあんぐりと開け、サンは涙が止まった目を何回も擦っていた


つぼみも思考が停止し、叩かれたままの形で固まってしまった


止まったサンの涙が、今度はシカマルに移ったようで





「つぼみ、のっ…ばかぁ…!!」


うあぁああああ…!


そう叫びながら泣き出してしまった。目の前で見る彼の久々の泣き顔につぼみは焦り、なだめようとするもまた叩かれる。つぼみも泣きたくなった






「お、おいおい…いったいどうしたんだあいつは」

「………はっはっは、シカクさん、シカマルくんも男なんですよ」

「え?」


ニカッと笑い、トドメの枕を顔面にくらった娘を抱き上げた。我が子はこれぐらいで泣きやしないとわかっているので、シカマルを責めるようなことはしない



「それに…シカマルくんは悔しかったんだよな」


嫉妬、しちゃったんだよなぁ


変わらず笑顔でそう問えば、相手は顔を真っ赤にさせながら部屋から飛び出していってしまった





「嫉妬、って…息子まだ二歳なんだけど」

「つぼみに名前つけてもらったヒマワリが羨ましかったんですよ」

「子供らしい嫉妬だが、息子まだ二歳なんだけど」

「シカマルくーん!涙が男を強くするんだぞ!」

「なぁ、息子まだ二歳」



「…じゃあオハナ一人じゃ心配なんでこれで失礼しますね」


ご迷惑をおかけしました、そう言って固まる娘を抱いたサンは奈良家を後にした

シカクは頭をかきながら本気で泣く息子に視線を向ける





「………こっちはまだ、解決してねぇぞ、おい」



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