「わぁああぁあ!!!シカクさぁぁあぁん!!!」


男性の低い悲鳴が里中に響いた。任務帰りでのんびり歩いていたシカクは、大声で呼ばれた自分の名に盛大にこける。しかもカッコ悪いことに、顔面から行って鼻が擦りむけた。地味に結構へこむぜ、これ


服の汚れを叩き落とし、名呼んできた人物の頭を叩く


「っせーよ!人前で恥ずかしいからやめろっ!」

「だだだだだだだ!むむむっ!お、ぅ、あ…うぉぉぉぉお!!!」


誰か通訳!


顔を上げ怒鳴れば、だばー、と顔から出せるもの全部を出す後輩のサンがいた

あまりの泣きっぷりに少し引きながら「とりあえず泣き止め」と言ってハンカチを手渡した。サンはそのハンカチを目に…ではなく鼻に添えた


「ぶひぃーッ!!」


うん、お約束をありがとうな。頭を殴ってやった、もちろんグーで

ちなみに嫁からのプレゼントだったため、地面に埋めてやった


「何か言うことは?」

「ずびばぜんでしだ…」


シカマルとの血を感じられる瞬間だった









後輩の顔面を地面に埋めたあと、何か言いたそうにしていたので、シカクは涙と鼻水と…額から血を流すサンを自宅に呼んだ。…すまん、地面に押し付けすぎた


「ただいま」

「お邪魔しますっ」



「!」


サンと一緒に帰ってきた父親にシカマルは反応をする

しかし、つぼみがいないとわかった瞬間


「………はぁ、」

「………………」


ちょ、おま、


「おっ、シカマルくんこんにちはー」

「サンさん、こんにちは」


深いため息をこぼしたシカクの息子。すんませんねぇ、つぼみちゃんがいなくて!あとお父さんにお帰りなさいは!?


視線で訴えるも、枕片手に去っていく息子。どうやら昼寝でもするようだ


シカマル、いつか父ちゃん泣くからな。お前の目の前で泣くからな!





サンとシカクは客間に入り、テーブルを挟んで向かい合って座る


「…で、落ち着いたか?」

「はふー…、はい。お騒がせしました」


「まったくだ」シカクは腕を組みガクリと項垂れた。昔からこんな感じだった後輩に、今さら怒る気にもなれない


あはは、と笑うサンに彼は、先ほど何が言いたかったのか尋ねる


するとサンはパァッと顔を輝かせ「実はですね、」と語り始めた


「先日報告した息子のことなんですが…名前、決まったんです」

「ほぉ、もうか。早いな」

「はい!」





おれがサン、

つまり『太陽』で、オハナは『花』


その二つから連想して名前は





「ヒマワリ、にしました」


そう言い切ってまたじわりと涙を溜め始めたサン。シカクはやれやれ、と笑いながらティッシュを渡した



花と太陽でヒマワリね

まぁ、お前らの子供って感じがするよ


ついにわんわん泣きだした後輩を、シカクは口許を緩ませながら見つめた


そして数回瞬きをする(んん?)




確かに、確かにお前らの子供らしい名前である

しかし、だ


自分の髭に触りながら、シカクは眉間にシワを寄せた



今のどこに号泣要素が…?


先ほどの彼の台詞をもう一度頭の中で再生するも、どうしてもあの泣きっぷりに結び付かない


「なぁおい、」

「ぶぷひぃぃい!!!」


ちょ、力いっぱいかみすぎだろ


「ぁ゛ー……あっ、はい!なんでしょうか?…ずぴっ」

「ぇ…ぁ…ぃゃ……」


何故か小声になってしまったシカクであった

戸惑うシカクに首を傾げるも、まぁいいか、で済ませたサンは使用済みティッシュをゴミ箱に投げ入れた。よぉーし、ナイスシュートだおれ!


「それで、」

「あ?」

「……シカクさん、この名前とその理由、誰が考えたかわかります?」

「…はぁ?」


そんなのお前だろ?シカクの言葉にサンは首を横に振る


「つぼみですよ、つぼみ。娘が考えたんです」


父と母のことを考えて、あの子は弟の名前を…!

なんか、もう、おれ、感激、しちゃって





「っふ、う゛ぅぅうぅ…!!」

「あーあーあーあー…泣くな泣くなっ!」


せっかく止まった涙がまた、だばばばー、と先ほどの倍流れ出てきた。まさに滝だ。もうこのデカイ子供をどうしよう



とてもめんどくさい


ったく、これなら常識はずれのバカ息子の方がまだ楽だな

今だって隣で枕片手に大人しく座ってるしよぉ



………うん、ちょこん、って座ってる、し

……………うん、うん








「………し、シカマルくん…おま、いつからそこにいた?」

「……………」


ぉ、お父さん気づかなかったなー


シカクは頬を引きつらせながら隣のシカマルにそろりと視線を向ける。あの、気配、わからなかったんですけど


忍としての修行を始めてまだ日が浅いのに、もう抜かされたのかもしれない。シカクはそこそこ落ち込んだ


…おれも修行、やろっかな。はぁ…





そんな泣きじゃくるサンと落ち込むシカクの間に座るシカマル

いつもより深いシワを眉間に作る彼は、枕を握り締め顔を伏せた


次に彼が顔を上げたのは、玄関の戸を叩く音と同時に聞こえてきた、女の子の声が耳に届いたときだった



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