「一昨日、かな?ヒマくんと公園に行ってたらね」


三人の肩がピクリと跳ねた。ズルい、羨ましい、ブッ飛ばしたい、そう顔に書いてあったが、つぼみは気付かず話を続ける



つぼみの話によると、久々に遊ぼう、と弟が誘ってきたため公園に遊びにいったらしい

「何する?」「忍者ごっこ!」「ごっこ、って…ヒマくんアカデミー生でしょ?」「ぃ、いいんだよっ」そんな会話をしていると、先に公園にいた弟のクラスメイトが二人を発見して


『やぁーい!ヒマワリのシスコーン!』


なんて、からかってきたのだ。男友達同士のじゃれあい、つぼみはその様子をニコニコとしながら見守っていた

しかしどうやら、そんな彼女が気に入らなかったらしい弟の友達は


『しかも騒いでるわりには普通だな





つーか、ブス!』


ピシッ

ビキッ

パリィン!!!








「………ぇ、えーと」

「で、それから?」


突然割れたシカマルのコップ。いのとチョウジのコップにもヒビが入ったが、先にひび割れていた彼のコップはもう限界だったようだ

絶対零度の微笑みに一般人のつぼみはもちろん、上忍のアスマでさえ震えている


三人は「それで髪が短くなった理由は?」と綺麗すぎる笑顔で尋ねてくる


つぼみはアスマに助けを求めるも、一向にこちらを見てくれないためしぶしぶ言葉を続けた


「本気の喧嘩が、始まっちゃって…流石に私も止めた、の」


そしたらその子、泣きながら帰っちゃって

いったんその場は治まったんだけど


「相当悔しかったらしくて、あのあと駄菓子屋に、行ったのかなぁ…」





こう、買ってきたガムを私とヒマくんの髪にベタッて…





バキッ!!!


「……………ふっ…く、くく…」


コップを握り潰した拳が、今度はテーブルを割った

驚きのあまり両手をばんざいして固まるつぼみの前で、突然笑いだしたシカマルは、背中にどす黒いオーラを背負いながら



「そのクソガキ、」


ぶっころーす


アスマの予想通り、鬼と化した

シカマルだけでなくいのとチョウジまでもが立ち上がる

これはいかん、自分の命が危ないとわかっていても止めなくては。焦ってアスマが三つの背中に手を伸ばすも








「………お客様、これはどういうことですか」


店長に捕まった。えっ?あ、ちが、違うんです。これには深いわけが…べ、弁償はするんで領収証下さい

え?今すぐ払え?無理無理無理無理無理!今すぐは無理だから!


アスマが土下座をして謝っている後ろで、つぼみが三人を止めに入った

「髪はそろそろ切ろうと思ってたから大丈夫」そう説得するも彼らの怒りは治まらなかった


どこのどいつだか知らねぇが、ぜってぇ殺す

丸坊主にしてから、ぶっ殺してやらぁ


こうして三人はつぼみの目では追えない速さでいなくってしまった





焼肉屋に取り残されたアスマとつぼみ

もう彼らを止めることは出来ない。アスマは床に頭を擦り付けながら何もかも諦めた。きっと木ノ葉の里はもう終わりだ。こんなことなら紅に告白の一つや二つ、しとけばよかったぜ…

あ、でも木ノ葉潰れたらこの支払いも関係なくなるのか。やった、ラッキー


残り少ない時間だけでもポジティブに、アスマそう己に言い聞かせた





「……………」


一方ことの原因であるつぼみは、この状況に唖然としていた。なにがどうしてこうなったの?

彼女はただ、みんなが試験から帰ってきた、と聞いたから会いに来ただけなのに



「……そんなに、似合わないのかなぁ」


あそこまで怒るほど、彼らは長い髪が好きだったのか。髪型にこだわりはなかったつぼみだったが、また伸ばした方がいいのかもしれないと思い、毛先をつまむ


短いのも、楽でよかったんだけど…


しょんぼり、彼女は視線を下に向けた








「…はぁ、」

「大丈夫大丈夫、つぼみさんはどんな髪型も似合うわ!」

「…え?」

「うん、ボク今のつぼみさんも好きだよ」

「え?」

「おぉ、似合わないなんて言うやつはこの世にいねぇよ」

「えっ?」


そうだな。いたらお前らが消してるだろうな、てかいつ戻ってきてたし


アスマたちが止めるにも関わらず店を飛び出していったシカマル、チョウジ、いの。しかしつぼみの呟きに瞬時に戻ってきた


どうやってあの呟きが耳に届いたんだよ。化け物か、お前ら


目が点のつぼみを囲んで楽しそうに会話をする暴走者三名。頭にたくさんの"?"を浮かべる彼女はとりあえず三人の「ただいま」と言う言葉に笑顔で返した。もう深く考えることは止めたらしい



「つぼみ、おれ"だけ"、予選に受かって本選に出んだよ」

「そうなの?がんばってね、応援してるっ」

「おー、」

「…ッズルい!私だってつぼみさんに『がんばって』って言われてたら予選突破できたわ!デコリーンにだって負けなかったー!!」

「ボクだってあの音忍に勝てたよぉ!!」

「ふ、残念だったな。まぁ、チョウジの仇はおれがとってやる」

「あはは、みんな仲良くねー」








「…んで、笑ってられるんだよ」


アスマはぼそりと力なく呟く


そうか、あいつらと付き合っていくためにはあのぐらいのスルースキルが必要なのか


彼はフッと笑い、新たなタバコに火を点けた









「ちょっと、何無視してるんですか。しっかり弁償してください!」


ちくしょう、スルーできなかった





(あの、カードでの支払いって…あ、やっぱ無理?)



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