「いただきまーす!」 「ちょっと、一応メインはシカマルなのよ?」 一応って、アスマはタバコを灰皿に押し付け苦笑い。中忍選抜試験予選を終えた今、第十班メンバーは焼肉屋に来ていた シカマルの本選出場祝いである 「別にいいよ、追加注文すりゃいいし」 「それもそうね」 「すいません!このページの肉全部お願いします!」 「泣くぞ、テメェら」 優しさの欠片もない生徒だ チョウジの働きによりものすごい早さで肉が消えていく。店に来てからしばらく経つのに、おれまだ食えてないんだけど。ねぇチョウジくんやい 「でもあのシカマルが本選ねー」 「あ?」 信じられないわ、そう箸を片手に言ういのにアスマも頷く サバイバルのときは知らないが一対一のバトルのあの予選、それならおれも見ることができた そのときのシカマルといったら、もう… 「殺る気に満ち溢れてたよな」 「うん。ボクらこの試験中『めんどくせー』って聞いてないよ?」 「確かに!」 それは大変だ。嵐が来る 「んだよ……しゃあねぇだろ?つぼみに応援されたらやるしかねぇし」 通常運行だった。よかった、明日は普通に晴れだ ニタリ、そう笑うシカマルにいのとチョウジは悔しそうに箸をくわえる。うんうん、これぞいつもの光景だ 試験前だったらこの騒ぎに今頃頭を痛めていたが、久々に見るそれに何故だか懐かしさを感じる。…あれ?病院に行っといた方がいいかもしれねぇぞおれ 頭を振り、自分は正常。自分だけは正常と言い聞かす。そんなアスマの向かいに座るシカマルは、箸を持つことすらせず、ぼーっと外を眺めていた そんな彼にチョウジは気付いたようで、どうかしたのか、と尋ねる 「いや、」 つぼみ、まだ来ねぇのかなぁ…って、思ってよ その呟きに全員が黙る。肉の焼ける音がとても食欲をそそる 「来ねぇのかなぁ、って…シカマル、お前呼んだのか?」 「は?呼んでねぇけど?」 当たり前のように返された。困惑する三人に、シカマルはコップ片手に言葉を続けた 「だってよ、これおれの祝いだろ?」 あ、嫌な予感がする。アスマはビクリと肩が跳ねた 「それなのにつぼみ呼ばねぇとか、ねぇよな?むしろサプライズゲストとして呼んどくよな?」 そうだろ? 猿飛センセー 「ぁ、ぁあ、あ…アタりまえ、だロ…?」 「そうッスよねー」 アスマの言葉にシカマルはにっこりと笑った。いのとチョウジも「やったー!」と両手をあげて喜んでいる そんな部下の隣で彼はタバコに火を点けようとした。が、手が震えて思うように動かない ぶっちゃけアスマはつぼみを呼んでなどいなかった。なぜ呼ぼうと思わなかった昨日のおれ! もし今ここで「わり、呼んでねぇや」なんて言ったら……おれの最期の飯が焼肉になる。いや、むしろ焼肉にされる ライターを何度も擦りながら必死に解決策を考える。しかし何も思い浮かばない 「もう知っちまってるし、サプライズじゃねぇから呼んでもいいぜ」 「そうそう、ボク早くつぼみさんと焼肉食べたい!」 「先生、はーやーくー!」 呼べるわけねぇだろ!!そもそも呼んでねぇんだから!!! そう、腹の底から叫びたかった 「………お、おう。今呼んでくるぜ」 んなことできるわけねぇ。本音を飲み込みへらりと力なく笑う。そんなアスマを見てシカマルは、あーこれマジで呼んでねぇな、とようやく理解した 理解した、が 「五分、二分…いや、一分以内で」 ………とりあえず、連れてこなかったら根性焼きでもすっか 鉄板があるわけだし 理解はしても、許すつもりはないようだ。アスマの助かる道は、つぼみを連れてくることしか残されていなかった めんどくせぇことされたくなかったら、気合い入れて探してこいよ、アスマぁ |