中忍試験の準備で忙しい部下に久々に会った。なんかもう、いろいろとやつれていた





「あ゛ー………」

「はっはっは、今にも死にそうだな」


昼休憩を頂いたシカマルは覚束ない足取りで道を歩いていた。そんな彼を見つけたアスマは昼飯の一つでも奢ってやろう、と声をかけたのだ。チョウジじゃねぇし、大丈夫だろ


「ご注文はお決まりですか」

「あ、この店で一番高いやつを」

「おいこら、調子乗んな」





頼んだ料理をつつきながら仕事状況を聞いてみると、下っ端ゆえにいろいろとこきを使われているらしい。仕方ないっちゃ仕方ないが…この様子ではいつ倒れてもおかしくない、それぐらい疲れきっているシカマル

いくら下っ端とはいえ、さすがにこれは、心配になったアスマは「おれから言ってやろうか」と尋ねる。その台詞に彼は首を横に振った


「中忍試験の準備も、先輩からのパシリもそう苦じゃねぇ。めんどくせぇが」


でも、それよりも

そんなことよりも





「ここしばらく、つぼみに会えてねぇんだよ……ッ!!」

「あ、すみません。お茶のおかわりいいですか」


要らぬ心配だったようだ


熱々のお茶をすすりながら今日の午後の予定を、頭の中で整理する。その間にもシカマルはどんどん落ち込んでいき、遂には顔を伏せてしまった。お前がめんどくせぇよ

大変関わり合いたくないのだが、目の前で「つぼみー…、ぐすっ」と言われたらアスマも堪ったもんじゃな……え?お前泣いてるの?

仕方ない、そうため息を一つし声をかけた


「そんなに会いてぇなら会いに行けばいいじゃねぇか」

「行った」


行ってたのかよ


「でも全部入れ違いだった」


御愁傷様です


とことん運がないシカマルだった

のろのろと体を起こした彼は、少し冷め始めた料理に手を伸ばす。あー…定食の味噌汁がうめぇや…





「やっぱり、シカマルくんにアスマ先生だ」


ぶふーっ


「きったねぇ!!!」


宙を舞う汁と豆腐。着地先はアスマだ

手前でギャーギャー騒ぐ彼を無視し、シカマルは振り返った。そこには、彼が心の底から望んでいたつぼみの姿が


シカマルはこぼれそうな涙をこっそり拭いた。あぁ、これが嬉し涙ってやつか


仕事着に身を包んだつぼみはいつもと変わらない笑顔で二人のもとへと駆け寄る


「お久しぶりです」

「お、おぉ…元気そうだな」

「はい。…シカマルくんも、久しぶり」


ちくしょう、癒される


あまりにも嬉しすぎるこのサプライズに、先ほどまでの疲れは吹っ飛んでいく




しかし、腑に落ちないことが一つ


「……いつも通りだな」

「?うん」


あぁ、キョトンとした顔もかわいい。じゃなくて

仕事に追われていた彼は彼女に会うまでげっそりとしていた。さすがつぼみ依存症のシカマルである


それなのに


「そういや今仕事中だろ?どうしてこんなとこに?」

「え?あぁ、この前から配達も始めたんですよ。ほら、私の働いてるとこお年寄りのお客さんも多いから…自宅までお届けです」

「へぇ、ご苦労様」



「……………」


ホンット!いつも通りだな!


楽しそうにアスマと話すつぼみを見てぶすっとふてくされる。今すぐアスマを殴りたい衝動にかられたが、とりあえず我慢


…こっちは会えなくて死にそうだったってのに


「寂しかったのはおれだけかよ、」舌打ちをしながらもう一度味噌汁に口をつけた



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