子供とはかわいさを持って産まれてきた生き物だ。かわいいと油断させ、野性動物は厳しい自然環境を生きていく


人間だってそう


「つぼみっ」

「シカマルくん、こんにちは」


見慣れた訪問者にシカマルは駆け寄っていった。とても嬉しいようで、目がキラキラと輝いている


「はっはっは、二人は仲良しだな!」

「うん、つぼみとおれは仲良し」


ずぅっと、いっしょ


つぼみの脳内に銃声が響いた。いつものことである


「いっしょだよー、じゅっといっしょだよー!」

「はっはっはー!まったく、父さん妬けちゃうぞ!」


ぎゅう、と男の子を抱き締める娘の横で豪快に笑うサン。子供はかわいいなー、ぐらいしか思っていない。それは娘のつぼみも同様に


しかし、二人に隠れてニヤリと笑う子供が一人





子供は誰しもかわいいさを持っている。そしてそれを無意識に武器としている

だが、それを意図的に武器として使っている子供もいるわけで





「……おぉ、サンか。どうした」

「あ、シカクさんこんにちはー!」


そんな息子の計算がわかってしまうシカクは、壁に寄りかかりながら訪問者を招いた。子供二人を微笑ましげに見守れるこいつが羨ましいと思いながら


「連絡もしないでいきなりすみません」

「構いやしねぇよ」


喜んでるやつもいるし。そう呟き、未だにつぼみに抱きついている息子に視線を向けた

一向に離れないシカマルに困ったつぼみは「どっこいしょー」と言い、シカマルを抱えて歩き出す


「…つぼみちゃん、また一段とパワフルになったな」

「そうですか?」


この行動にも驚かなくなったのは、息子の奇行のお陰だろう。うむ、全然嬉しくない










オハナさん、つぼみの母ちゃん

おれの母ちゃんと仲良し。でもおれとつぼみの方が仲良し

いつもニコニコ笑ってる。どことなくつぼみに似てる。けどやっぱり、つぼみが一番

おっちょこちょいでよくつぼみが困ってる。ずるい、おれも困らせたい。この前も何かあったらしく「おかあしゃんの、ばかっ」と泣いていた。ずるい、おれも言われたい。泣かせたい


つぼみの母ちゃんだから、おれにとっても大事な人





サンさん、つぼみのおやじさん

名前が呼びにくい人。でもつぼみのおやじさんだから呼び捨てはダメ


この人もいつも笑顔。でもニコニコじゃなくてニカッて感じの人


つぼみに近づいてもいい、ただ一人の男の人。いつかおれのおやじさんにもなる。絶対に

「娘はやらんぞ、シカマルくん!」なんて言ってくるけど、嘘。この前お昼寝してたら「二人の結婚式はどこにします?」なんておれのおやじに聞いてた。だからこの人好き。大丈夫です、つぼみはおれが幸せにします


この人も、おれにとって大事な人





「シカマルくん?どうしたの?」


考え事かな?そう首を傾げながら聞いてくる女の子、つぼみ


世界で一番大切な人

おれの大好きな、人


「うん、考え事」


つぼみのこと、考えてた


なにして遊ぼうかな、そんなことじゃないよ

つぼみとこれからずっと一緒にいるにはどうしたらいいのかな


そのためには何を大事にして、何を片付けなきゃいけないのかな。って考えてた


「なに考えてたの?」

「……ひみつ、」

「じゅるいっ」


つぼみの顔見て、オハナさんやサンさんみたいに笑えば「でもかわいいから許す」と言って抱き締めてくれた


笑顔は大事って聞くけど、本当にそう思う。笑顔便利、笑顔ばんざい


つぼみばんざい








「つぼみがいつもお世話になってるし、仲良くさせてもらってるんで一番にご報告をしようと」

「報告?なんかあったのか?」

「はい!とてもいいことです」


いいことってなんだろう


父親二人の会話が耳に届き、きょとんとした顔でつぼみを見る。そんなシカマルにつぼみはにこっと笑った


「……つぼみにとってもいいこと?」

「うん、とってもいいこと」


なんだろう

なんだろう


おれにとってもいいことかな


草花親子の言葉が気になる奈良親子は、二人の顔を交互に見る。そっくりだな、つぼみはぷ、と笑いをこぼした

「実は、」サンの大きい声が部屋に響いた










「昨日オハナと病院に行ってわかったんですけど、


……二人目、できちゃいました」

「……………へ?」

「へへへ、今度は男の子です!」


嬉しそうに笑う後輩。数秒遅れて理解したシカクは「よかったな」と言い、口元を緩ませた



そして気付く

背後から伝わってくる殺気。それは微々たるもので、忍としては優秀なサンすら気付かないものだ。仕方ない、彼は今気が緩んでいる





「…おとうと?」

「うんっ、しょうだよ」


つぼみが子供好きなのはよく知っている。本人も子供なのにな、シカクはツッコミかけたが首を横に振った。いかん、それは考えてはいかん

そんな彼女に、弟ができる。となれば、シカマルと一緒にいれる時間も少なくなるわけで





「へー。よかったね、つぼみ」


誰が見てもかわいいらしい子供の笑顔。しかしシカクはわかった。この笑顔の下では子供とは思えぬ嫉妬の渦があることを


笑顔というこの武器を自在に操るシカマルの本性を、サンとつぼみが知ることはなかった



「おとうと、ね…」





(片付けなきゃいけないものが、決まりました)



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