「「つぼみさーん!」」

「つぼみー」



「……お?皆どうしたの?」


聞き慣れた可愛い三つの声に、つぼみは玄関の戸を開けた。そして頬の刺されて赤くなっている部分を掻きながら近付く


「つぼみさんが蚊に悩まされてるって聞いたから、これ!」

「あ、ムヒだ」

「ボクはこれ」

「お、蚊取り線香」


探しても家にはなかった二つ。どうやらプレゼントしてくれるらしい

確かになくて困っていたのでつぼみは遠慮することなく受け取った


「ありがとう、皆っ」

「ふふふ、どういたしましてー。…あれ、そこのデコ助さんは何もあげないの?」

「…………チッ」


相変わらずの二人だなぁ、つぼみが苦笑いしているとチョウジが袖をちょいちょいと引いてくる。そして耳元でコソッと「シカマル、ジャンケンに負けたから」と呟く。…何のジャンケン?


「誰が何買うのか。蚊に関する商品この二つしかなかったから…」


あー、つまり自分は何もあげてない。と

だから不機嫌そうなのね


皆が、三人が考えて買ってきてくれただけでも嬉しいのにな。つぼみはニッコリ笑いながら口喧嘩をする二人を見つめる

いつもならこの喧嘩も長いのだが、今はもう夕方。三人も家に帰らなければ


「また今度、遊びにおいで」変わらず笑顔で伝えると三人も笑顔で頷き返した

そのまま立ち去る彼らの背中を見送るつぼみ





………しかし動かない背中が一つ


「……………、」

「シカマルくん?」

「…つぼみ、あんさ」


小さく、囁くように発せられた言葉


「今日、泊まりにくっから」


そんで、おれが蚊潰してやるよ





「……………えーと、つまり?」

「おれからは、安眠をプレゼントってことで」


「んじゃ」片手をあげて今度こそ歩き出したシカマル

その姿につぼみは「…今夜の夕飯、一人分多目に作らなきゃ」と言うだけだった

意識?そんなもの彼女にはない。シカマルが泊まりに、しかも突然来るのは昔からよくあることだったからだ



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