シカマルくんを抱っこしたい、でもこの年齢の体じゃ正直言って不可能だ

なら筋トレをしよう!


そう思い立ってどれくらい経っただろうか。今では同年代の子の倍以上の筋力がついた。なので彼もこの通り


「はい、だっこー」

「……………」


らくらく持ち上げられる!


今日も奈良家に足を運んだつぼみ。もはや第二の家と化している。…来なかったら来なかったで不機嫌になるやつがいるわけだが


シカマルくんは軽いなー、そりゃそうか。最近まともに歩けるようになったばっかだし

……くぅー!バタバタさせてる手足が可愛いー!


自分が相当子供好きな性格と判明。前世は保育士になっておくべきだったな、とふと思う

しかしつぼみは気付かない。手足をばたつかせているこのシカマルの行為が、「抱っこは嫌」というアピールということに


まったく気付かないつぼみにシカマルは声に出して拒む


「いや」

「んっ?」

「抱っこ、ヤ!」

「…………え?」

「い・や!!」


ガボーン!


つぼみはショックのあまり目の前が真っ暗になった!

ゆっくりシカマルを床に下ろし、そのままペタリと座った


……わ、私の筋トレの日々が…すべて無駄に…!!





「………………」


背中に陰を背負うつぼみ。それをじぃっと見つめながら、シカマルは動いた










「お?今日は誰か来て…って、つぼみちゃんだよなぁ」

「そうよ。ふふ、本当シカマルはつぼみちゃんが好きよねー」


そうだな、病的にな


シカマルの成長が恐ろしく早いのも「愛」によるものなのだろう。と、最近納得できるようになってきた。がんばったな、おれ


あいつのつぼみちゃんに対する想いは本気なわけだし

ときどき度が過ぎる場合もあるが…


応援は、してるさ


「って、まだ五歳にも満たねぇのになに言ってんだか」そう言いながら二人がいる部屋の戸を開ける

手には持っていくよう頼まれた飲み物とオヤツがお盆に乗っており、





ガラッ


「おーい、オヤツ持ってきてやった…」

「あ、」


ガッシャン


戸を開けた瞬間、手から離れ床へ落下した

そしてその流れで開けた戸を勢いよく閉める


…………いかん、信じたくない光景に思わず閉めてしまった

息子の奇行は受け入れたはずだろ。大丈夫、深呼吸してもう一度


がらっ





「お、お邪魔してましゅ…」

「……………はぁ、」



「………………おふぁ…っ!」


喉の奥から込み上げてくる空気が奇声と同時に出ていった。もう何度目だよ

でも仕方ねぇと思う。この前まではいはいしていた息子が、自分よりも大きい子を横抱きしてる現場を見たら…そんな声も出るって


抱えられているつぼみちゃんも状況が理解できていないらしく、おれと息子をキョロキョロと交互に見ている。すまん、おれも理解してない、したくない

いや、それよりもシカマル。おま、今のため息はどういう意味だ?あ?お盆に乗ってるもん全部落としたからか?





「………せっかくつぼみと二人っきりだったのに」


あ、そっちか


大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。シカクは「邪魔して悪かった」と一言声をかけ、雑巾を探しにその場を去った





「………シカマルくん、あの、なんで私がお姫しゃま抱っこしゃれて、」

「されるのヤ。だからおれがする」

「……………ちょ、えっ?」


ゴメン、お姉さんちょっと混乱してて

もっかい言って?





(おれがつぼみの、おうじさま)



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