赤丸と散歩をしていると、見知った人物が見知らぬ女と親しげに話していた

信じたくないその光景に、キバは目を見開き固まる


まさか、まさか…





「ナルト…おま、彼女かぁー!?」

「ぅおぉ!?…き、キバ?」


キバはタックルする勢いで駆け寄った


あのナルトに!?

……い、いや違うよな。うん、違う違う


もし仮にそうだとしても、きっとものすごいブ…


「…えー、と……ナルトくんのお友達かな?」

「……………」










そ、そこそこ可愛いー…!!!


受け止めたくない現実に手で顔を覆ったキバ。突然の友達の奇行にナルトは三歩後ずさった


「き、キバ…?」

「お、おま…!いつの間に彼女なんかっ…!!」

「はぁ?」


何言ってんだこいつ、とナルトは顔を歪ませる。騒ぎの原因となった彼女は、キバの言いたいことを理解し、ハハハと苦笑いを向けた


「あのー、」

「んだよ!」

「私、ナルトくんの友達のつぼみって言います」

「………友達?」

「うん、友達」

「………彼女、」

「じゃなくて、友達」


再び固まるキバ。ナルトの「おう!おれとつぼみ姉ちゃんは友達だってばよ!」と嬉しそうな声が響いた

足下の赤丸がひと鳴きし、ようやく意識が戻った


「そ、そそそそそうだよな!!ナルトに彼女ができるはずねぇよな!」

「ははは…って、どういう意味だコラァ!」


あのナルトなんかに負けてなくてよかった。ホッと息をついたキバは、ちらりとつぼみに視線を向けた

そんなキバにつぼみは首を傾げる


そこそこっつーか…





結構可愛いんじゃ…?


身近にいた金とピンクの女があまりにも肉食的過ぎて、こんな些細な動作に胸が高まってしまう

ドキドキといつもより大きい鼓動に戸惑いながら、キバは赤丸に合図を送った。パートナーの意図を理解した赤丸はつぼみのもとへ駆け寄る


「ワン!」

「あ、わんちゃん」

「へへ、赤丸ってんだ!おれの相棒だぜ」

「ほぉー、可愛いねぇ赤丸くん」


よし、掴みはOK!こういうとき、赤丸の効果は偉大だ。キバはバレないよう影でガッツポーズをした

しかしその瞬間をナルトにバッチリ見られていたらしく、恐る恐る近付いてきた彼はキバに耳打ちをした


「……き、キバ…まさかお前、つぼみ姉ちゃんに…」


惚れた?


その台詞によりボッと染まった頬。赤いペイントが同化している


「あ、あぁ!?なんか文句あんのか!?」

「い、いや…文句っつーか…」

「だったら黙ってろよ…!」


「ダチの恋も応援できねぇのか!?」「ダチだから止めようと…」ひそひそと繰り広げられる会話はつぼみに届くことはなかった。赤丸を撫でるのに夢中になっているからだ


「よーしよしよし、ムツゴロウさん並に可愛がってやろう」

「くぅん…?」


赤丸に癒され、のほほんとした空気を辺りにばらまく。しっかりと第二の母から受け継がれているらしい

そこにナルトの「あっ!」と言う小さな悲鳴が響く


「ナルトくん?」

「え、あ…いや、その…お、おおおおれ用事思い出したってばよ!」

「あらそうなの?ごめんね、忙しいのに引き止めて」

「気にすんなってばよ!んじゃあなー!」

「ばいばーい」


そんな急ぎの用事があったのだろうか。全速力で走り出したナルトの姿に、不思議に思いながらも手を振る

そんなつぼみの後ろ姿を見て興奮する、健全な男子が一名





ナルト!お前………でかした!!

テメェなんかが空気を読めるとは思わなかったぜ!


気になる相手と二人っきり。嬉しくないはずがない

このチャンスを潰さぬよう、キバは慎重に言葉を選んでいく


しかし、彼は気づいていない。なぜナルトがここをいきなり立ち去ったのか

急用があったわけでも、ましてや空気を読んだわけでもない


彼の視界がとある人物を捉えたからだ


このとき、キバの鼻がいつも通り仕事をしていれば…。あの独占欲の塊との遭遇はなかっただろう





「あー、と…つぼみさ、ん?…もし暇ならこれから、その、一緒に散歩にでも…」

「赤丸くんの?」

「ぉ、おぉ」

「いいの?ふふ、どうしよっかなぁ…」

「じゃあするか、三人で。あ、赤丸いれたら三人と一匹か」

「そうだな!赤丸のことも忘れ………………」





………………あ?


「あ、シカマルくん。いつの間に?」

「よー、つぼみ」

「わんっ」

「お、元気そうだな赤丸。キバも久しぶり」

「………………………………おう」


いつからいたのか。アカデミーの頃からの付き合いであるシカマルがキバの真後ろに立っていた

そして今はつぼみと肩を並べて赤丸を撫でている


…なんか、あのダルそうな背中から半端ねぇ威圧感があるのは………………………おれの気のせい?


「つぼみ、」

「んー?」

「わりぃけど、ちょっと大人しくしててくれねぇか?」

「へ?…うわわっ!」


そう言ってつぼみの耳を塞ぎ、そのまま自分の胸元まで彼女の頭を引っ張る。突然のことで驚くも「大人しくしててくれ」と言われたつぼみはその言葉に従う。…うん、どうしたんだろう









「……なぁ、キバ」

「は、はい!?」


先程よりもワントーン低い声に背筋が伸びる

目の前にいる、このおっそろしい殺気を漂わせている人物は…本当にあのシカマルなのだろうか


「お前がよ、誰に発情しようともおれは構わねぇ」


は、はつ…!?

お前はおれを何だと思ってんだ!?


「赤丸使って女を引っかけようが、おれぁ全然構わねぇ」


けどよ、





そこでいったん言葉を区切ったシカマルは、静かに、ゆっくりとキバの方を振り向いた






「その相手がつぼみだってんなら、赤丸含めてテメェら二匹とも、」








去勢、してやるよ





シカマルの声が聞こえないのか、きょとんとしながらこちらを見てくるつぼみがかわいらしい。しかしその可愛さで中和できないほどシカマルの放つオーラは恐ろしかった

そのときの彼をキバは後日、「母ちゃんより怖いもんがあるとは思わなかった」と泣きながら語ることになる





(ホント、姉ちゃんが関わるとシカマルはこえーってばよ)



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