「つぼみ、まっ…て」 「ゆっくりでいいのよー」 子供の成長とは早いもので、はいはいすら出来なかったころに出会ったシカマルは二本の足で歩けるまでに成長した つぼみもあの頃よりしっかりと歩けるようになり、こうして二人で出掛けることもできる ………相変わらずさ行が上手く言えないけどね どうした私、骨格に問題があるのか? くつを無事に履くことができたシカマルは、玄関前で待つつぼみに飛び付いた。その様子を微笑ましく見守るヨシノにつぼみは一礼し、外へと足を動かす 手を繋ぎながらよちよちと付いてくるシカマルに、ときめきを隠すことなく頬を緩ました。あー、今幸せだよー 「シカマルくーん、いきたいところある?」 「つぼみがいるとこ」 「………えー、と。私はもうここにいるから…」 「つぼみいればどこでもいい」 天使違います。この子は私の胸を締め付けて殺そうとする悪魔です シカマルくん大好き!な私は我慢することなく彼に抱き付いた。もとよりつぼみに我慢する気持ちがあったのかは謎だが 道のど真ん中で抱き付く幼児二人。まだこの年齢なので許される。誰が見てもかわいらしい光景だ 「だったらシカマルくんの家でもよかったのに」 「…つぼみと、二人が、いい」 ちくしょう 今日が私の命日か、そうなのか神様 「抱き合っててきもちわりーんだよ!」 「え、」 「!!!」 幸せに浸っていたら見知らぬ男の子の声がした。誰だ?と確認するために振り向くと、買い物のときよく見掛ける同い年くらいの少年だった 構って欲しい年頃なんだろうな、と思い特に相手にするつもりはなかった…………が、ここで気付く …………なんか、おしりがスースーする… 「ぎゃははは!クマのパンツだ!だっせー!!」 「…ッ!!」 ぬぁあ…!!こ、このガキー!! 急いでズリ下ろされたズボンを上げるも、時すでに遅し。バッチリ見られてしまった 恥ずかしさのあまり、つぼみの顔は一気に赤くなった。正直言って子供にパンツの一つや二つ見られても何とも思わない が、穿くときにでさえ抵抗のあったこのクマさんパンツ。それを外で、しかも大きな声で言われると、いくら思春期を終えているつぼみであっても、死にたくなるほど恥ずかしい 今度お母さんに頼もう……キャラクター物は止めてもらおう そう決意したつぼみ。名前も知らない子供をどうしようと思わないあたり、精神年齢が大人であることを再認識させる 顔の熱を残したまま、左手を伸ばす。「…とりあえず、公園でもいこうか」そう言って隣にいるシカマルの腕を すかっ 「………………あり?」 掴み損ねた 「……………え?」 ………いや、これは掴み損ねたというより 「………シ、カマルくぅーん!!?」 いなくなっちゃったんですけどー!? 焦って周りを見回すも結ってある黒い髪が見当たらない。ついでに先程の子供も見当たらない、いや、それはどうでもいい 赤から青へ、忙しなく変わる顔色。つぼみは大きな声で名前を呼ぶも、彼の可愛い声は返ってこなかった(どこいっちゃったのー!!) 「へっへ、クマとかだせぇんだよ…」 好きな子を苛めてしまう。男の子なら、小さい子供なら誰しもが通る道だろう。もちろんそうでない子もいるだろうが 先程の子供もその一人である つぼみが怒ると思い走って逃げてきた彼は、肩を揺らしながら呼吸を調えていた。そうとう全速力で走ったらしい 「はぁ、はっ…マヌケな女…」 人気のない小道で休むこと数分。母親から頼まれた買い物のことも忘れて壁に寄りかかった そのとき 「みーつけ、」 「?」 「たっ!!!!」 「ッ!!?」 ドスッ! …どさっ 壁に寄りかかった瞬間、子供は地に倒れた。男の、人体の急所にそこそこ太い枝をぶっ刺されたからだ ものすごい痛み、泣き叫びたいのに痛みで声もでない 「おい」 そんな彼の目の前に一つの人影。涙で視界が歪んでいるため、ハッキリと姿を確かめることは出来なかった 「これよりも痛い思いしたくなかったら、二度とつぼみに近付くなよ」 「うっ…ひぐっ…っ?」 「どうしても近付きてぇなら、そうだな…おれに勝ったならいいぜ」 にぃ、と口を歪ませその場を立ち去る影。お尻に棒を突き刺しながら泣きじゃくるこの子供に、一生モノのトラウマが出来たのは言うまでもない 「シカマルくーん…お姉ちゃんここにいるよー…でてきてよー…ッ!!」 「………つぼみ、」 「!!………ッシカマルぐぅーん!!!」 「…勝手にいなくなって、ごめんなさい」 「いいよいいよぉ…!見つかってホント、よかったぁ…!!」 「…なぁ、つぼみ。お願いがあるんだけど」 「うん?なあに?」 (今度からパンツ、クマじゃなくてシカにして) |