草花つぼみ。歳はおれと同じ。そして忍の父を持ちながら一般人として日々暮らしている女性。この前からおれん家の店に働きに来ている

顔は…ま、まぁまぁじゃねぇの?ブスではない、んじゃね?


……いや、おれの好みじゃねぇけどな!!

おれはもっと胸のある女の方が…………お?こいつ結構胸あるんじゃ、





…いやいやいやいやいや!!!見てねぇし!それにやっぱおれは貧乳好きだし!むちゃくちゃ美人と付き合いてぇし!!



……そうだよ、やっぱ美人だよな

うん、だからこんなやつどうでも、って…




ぬぁっ……!?

あ、あれは!!





「お嬢ちゃん、かわいいね。最近働き始めたの?」

「え?あ、はい」

「はっはっはっ、こんな可愛い娘がいたら毎日来ちまうな!」

「ちげぇねぇ!」


変態オヤジA、B、Cィィイ!!


ゲラゲラと笑うABC。正直言って厳つすぎて甘いものが死ぬ程似合ってない。一種の営業妨害だ……っと、んなこと言ってる場合じゃねぇ!





「んー、胸もいいがお尻の方も…」

「えっ、ちょ…」


んな…!?


「お、客様!」

「あ?」

「なんだガキ」

「おれらは嬢ちゃんと話してんだ、邪魔すんな」


ふざけ…!!触ろうとしてたのはどこのどいつだ!


怒りのあまりカッ!と顔が熱を持つ。視界の端には、不安そうにこちらを見てくる草花つぼみが





どくんっ


……な、なんだこれ。なんでおれ、心臓がこんなばくばく言って…


…くそっ!そんな目でこっち見るん、


「がべぶっ」





……………………あ?え、ちょ、ま………………はぁ!?


ぐわん、と揺れ始めたあの娘。否、揺れているのはおれの視界だった

いてぇ、と感じると同時に自分が殴られたことにようやく理解する。そしてそのまま意識を手放した


……ってか、いきなりすぎんだろ!卑怯だろ!こんちくしょう!









「だ、大丈夫ですか!?」


ドサッ!と倒れたのは、絡まれたつぼみを助けようとしてくれたこの店の息子

殴られた頬を赤く腫らしながらピクリとも動かない。どうやら気絶してしまったらしい


ざわつく店内。倒れる彼の傍に駆け寄り、三人を睨んだ


「何するんですか…!」


怖さで震える声を絞り出す。つぼみの台詞に、殴った本人は焦りながら後ずさった


「お、おれじゃ…!おれじゃねぇ!」


…………はぁ!?


「何言って…しっかりと見てるんですよ!?」

「た、確かにおれが殴った!でもおれじゃねぇんだ!」


この台詞に連れであろう二人も顔をしかめる。あまりにも意味のわからないことを言うこの男に、つぼみは詰め寄った。もう頭きた…!


「目撃者は何人もいるんですよ!?」

「だから、ちが…」

「何が違うんですか!」

「おれじゃ…」

「あなた以外に誰がやったと…………ッ!?」


訳のわからないことばかり言う相手にイライラして、恐怖を忘れ詰め寄った。のが、いけなかったのだろう

大きい手が頭上高く上がった。その瞬間、ヤバい、と思うも体は動かず、目を閉じるので精一杯だった


来るであろう衝撃に身を構える





「…………?」


あ、あれ?

何にもこな、い?


いくら待っても来ない衝撃に、不思議に思いながら恐る恐る瞼を開けた


つぼみの視界に飛び込んできたのは、一番見慣れた人物の背中だった





「おっさん、もっと増しな言い訳しろよ」



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