ははは、と頬をひきつらせながら笑う。こんなんで泣き止むか不安だった、というか無理でしょこれじゃ、としか思えなかったが、どうやら奇跡は起こったらしい


目をぱちぱちさせながら私を見つめて数秒、赤ちゃんはちゅぱちゅぱと音をたてながら指を吸い始めた


やった、成功した!

いや、でもこれミルク出ないし、また直ぐぐずるんじゃ



…って、


あら?


「んっ…むうっ…む、」


……………な、なんか幸せそうだね、ぼく。私の指そんなに美味しい?


幸せそうに目を閉じながら吸う姿はまさに天使。私の指なんか吸わせて本当に申し訳ない


泣く気配のないぼくを挟み、無言で固まる私とこの子のお父さま。なんとなく気まずかったので、ぼくに「おいし?」と聞いてみると「あうっ」と元気な返事が返ってきた


……この世界の赤ん坊、半端ないッス(まさか返事してくれるとは)


大人しく黙って指を吸わせていると、お父さまが静かに口を開いた


BGM付きで


「お嬢ちゃん」


ちゅぱちゅぱ、


「はい」


ちゅぱっ、


「あー…その、なんと言ったらいいか」


ちゅぱちゅぱ、ちゅぱ


「なんでしゅか」

「………本当にあの二人の子供か?というか子供なのか?」


ちゅ…ぱ、ちゅ


「はい」

「………ちなみにいくつ?」

「にしゃい」

「二歳ぃ!?」


あ、やっぱこの世界でもダメですか?

あ、あはははは。ちょっと二歳で敬語はなかったな、ははは………どうしよう


物凄い顔でこちらを見てくるぼくのお父さま。今更だが、ぶっちゃけ「あなたは誰ですか?」と空気を読まず聞きたかったが、グッとこらえた。きっと父の知り合いだろう


ふとここであのBGMが消えていることに気付く

見るとぼくが眠そうに目を細めていた


こんな偽おしゃぶりに満足していいのか君は。もしかして将来おバカさん?でも可愛いから許される。なんて思いながらそろりと指を引き抜く

でろーん、と糸を引きながら指を抜けば、ぼくは完全に寝てしまった





「…!」

「「あ、」」

「……………っ、やぁぁ゛あぁ…!!」


嘘です。泣き出しました


「びやぁぁあ!」と手を伸ばしながら豪快に泣くぼく(丁度後ろからも豪快な音が)(お母さん、いい加減にしてください)

焦った私はまだヨダレが付いている手の方を、ぼくの前に出してしまった。すると今度はぼく自ら口に含み吸い出した


泣き止むぼく

黙る私と彼の父

また何か散らかした私の両親





「…あの、完全に寝付くまで指いいか?」

「………はい、大丈夫でしゅ」


こうして黙って指を吸われること15分。初めて見たときよりも心なしかやつれたこの人は、無言で頭を下げて帰っていった





(え、何しにここに…?)



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