もう子供ではない、とは言え、このメンバーが集まれば嫌でも騒がしくなる。現に今も目の前では、ナルトVSチョウジの肉争奪戦が繰り広げられている


「久々に皆で何か食おうぜ!」そう言ったのは誰だったか。その呼び掛けに応えることの出来たメンバーが、ここの焼肉屋に集まった。正直言ってめんどくさかったおれだが、強制連行されたため大人しく参加をしている


いや、今からでも遅くねぇ

さっさと帰らせろ


「シカマルこらぁ、おれの酒が飲めねぇのかぁ」

「おーい、誰だ酒頼んだ輩はー」


おれたちまだ未成年だぞ。頼む方も頼む方だが、出す方も考えろ


コップ片手に隣に座り絡んでくるキバを力の限り押し返す。しかし、そんなことお構いなしにこいつは話を始めた


「聞いてくれよぉ…おれなぁ、この前告白してさぁ」

「で、フラれたのか。ドンマイ!お疲れ!…ほら、慰めてやったからどっか行け」

「ぅ、うわぁぁあ!ひっでぇよぉぉお!!」


滝のような涙を流しながら、近くにいたナルトに飛び付くキバ。飛び付かれた際にスキが出来たらしく、チョウジがすべての肉をさらっていった。それにより、キバはナルトに殴られた。不幸尽くしだな、あいつ





「あー、知ってる知ってる。キバのフラれ話!結構有名よ」

「へぇ、」

「…………………」

「…………………」

「…………ちょっと」

「あ?」

「聞かないの?どんな話なのか」

「おぉ、一切興味ねーし」


別にどんな惨めなフラれ方してようが、おれには関係ねぇし


しかし、そう思ったのはどうやらおれだけだったらしく他の全員は興味津々でいのの顔を見た。キバは「傷をえぐらないでくれ!」と叫んでいるが、いのがここで話さないわけがない


とりあえず、ドンマイとだけ言っといてやるよ

ま、一番悪いのは今回参加したお前だけどな


「キバが告白した相手!その人ね、確かに美人なんだけど…彼氏がいたの」

「そうだよ!だからフラれたんだよ!!」

「私に怒らないでよ!その人、彼氏がいるって知らなかったあんたが悪い!」

「ていうか、バカップルで有名な人なのに知らなかったあんたが信じられない」

「うるせぇ!知らなかったもんは知らなかったんだよチクショー!!」


いのとサクラに止めを刺されたキバは、コップを床に投げ捨てた。そして再びナルトに飛び付こうとするも、綺麗に避けられている


「…………めんどくせぇ奴ら」

「"ら"ってなによ、"ら"って」


いのとサクラにジロリと睨まれ無言で肉に箸をのばす。うるせぇ、てめえらが含まれてないと思うなよ。そう言ってやりたかったが、めんどくさいことになるので我慢することにした


つーか、何この集まり。キバ慰め会?

あ、そういや集合掛けたのもキバだった気ぃする


…んだよ、マジで慰め会かよ


勘弁してくれ。ため息をつきながら少し焦げた肉を食べた。そして真っ黒に焦げたやつはキバの皿に乗せた。小さな復讐である


慰めどころか傷を広げられているが、めんどくせぇことに巻き込まれたことには代わりない


どうしよう、どうやって切り抜けよう。……あ、そうだ。あの娘のことを考えよう


おれの癒し、おれの天使、おれのあの娘

………くっ、もうだめだ。いや、だめじゃねぇけど、じゃねぇけれども、この時点でもう幸せだ


脳内に花が咲き広がったのがわかった。想像だけでこれだ、今から会いに行ったらどうなることやら


そう己に問うと、数える間もなく「確実に抱き締めはするな」と返ってきた。確かにやるな


そして頬擦りしてぇ、あの柔けぇ頬っぺたに。やりたいならすればいいじゃんか、我慢するこたぁねぇだろ。あ、やっぱそう?おぉ、やってこい。うん、やってくるわ


そんな自問自答を繰り返していると、両肩をガシリと捕まれた

眉間にシワを寄せながら右を見るといのが、左を見るとサクラのやつがいた。やっべ、めんどくせぇ予感しかしねぇ


「………んだよ」


にまにまと笑う二人に、低い声で対応する


「シカマルゥ、あんたずいぶんとにやにやしてたじゃなぁい」

「誰のこと、考えてたの?」



「………………」


ほぉら、予感的中

どうして女ってこうも色恋関係に敏感なんだか


「おっと用事を、」

「心転身の術!!」












「…さて、こうなったら酒の力で吐かせるわよ!」

「あ、リアルな方吐かれたら困るんだけど…あんたお酒強い?」

「存じません」


だからおれらは未成年だっていってんだろうが

いや、それよりもくだらねぇことで術を使うんじゃねぇ


めんどくさいことから逃げようと腰を上げた瞬間視点が暗転。次に目を開けた瞬間、どこにあった知らない縄にぐるぐる縛られていた。女怖い

女二人の背後にいるチョウジが心配そうにこちらを見ているが、この鬼婆二人が怖くて何も言えないのだろう。ありがとな、気持ちは伝わったぜ親友


「ぎゃはははは!!おれの話を聞かねぇからだ!!」

「さっきの女言葉使うシカマルも爆笑だったってばよ…ぶふっ!!」


ただしそこの馬鹿二人、お前らは絶対に許さねぇ


めんどくさい状況に抵抗らしい抵抗をせずに、床にぐでっと横になる。いのとサクラは「言えば協力するわよ?」なんて、悪い顔をしながらおれを見下ろしてくるが、正直言って要らぬ世話だ。あの娘とおれは、もう両想いなもんでぇ


このミノ虫体勢も疲れるな、縄抜けするかと思っていたら体が浮いた


「両想い、ですって?」


胸元を掴み、嫌な笑みを浮かべるサクラ。その恐ろしさにおれ以外の男共も怯えている

首の絞まる苦しさに耐えながら、必死に逃げようともがくも


「ふふふふふ…さぁて、ぜぇーんぶ話してもらうわよぉ」


シカマルは 縄抜けを した

しかし シカマルは
逃げられない!


前後を包囲されたおれはゆっくりと目を閉じた。お願いあの娘、助けて。今すぐ会いに来て。おれを癒して



こうしてめんどくさい二人のめんどくさい尋問が始まった





「私、あんたの好み知らないんだけど…相手はどんな娘?」

「……………」


いのからの 質問
シカマル は 顔を 反らした

サクラの 攻撃
シカマルは 首を 絞められた


「………とても可愛らしい娘デス」

「それがどんなのだか、言えって言ってんのよォ!!」

「おぶぅ…ッ!!」


サクラは シカマルを 叩きつけた


「彼女と付き合ってどれくらい?」

「どれくらいって……付き合っちゃいねぇけど」

「え?でも、あんたさっき両想いって…」

「親に挨拶したから、もう婚や、」

「「キャー!!」」

「ぅぶッ!」


サクラといのは テンションが あがった

シカマルは 頬に ビンタを もらった



………って、なんで言ったのにやられなきゃなんねーんだよ!


相変わらず狂暴な二人に遂にシカマルがキレた。己の体を縛り付けている縄を、力でブチ切る



「いいさ、言ってやらぁ…!!」


おれの想い、全部言ってやるよ!そう言って、グッと拳を握った





おれはなぁ、あの娘が好きなんだよ!!

あそこの!
雑貨屋の!
女の子!


テメェらと違って可愛くて、一緒にいるだけでも癒される、そんなおれの婚約者だよ!

あぁもう会いたい、今すぐ会いたい!!会っておもいっきり抱き締めたい!!


それぐれぇ好きなんだよ!!わかったか!?





と、腹の底から叫んだ。力いっぱい叫んだ。普段こんな風に叫ばないため若干のどを痛めた気がする

水が欲しいと思いながらあいつらの反応を待つ。しかし、いくら待っても沈黙しか返って来なかった


…反応されるのもめんどくさいが、無反応なのもめんどくさい


はぁ、と息を吐きながらコップの水を飲む

そこでようやくやつらが動いた


「シカマル、あんた…」





キモい


ぶっふー、水を吹き出したおれ。いのに合わせるかのようにチョウジを除く、やつらの声が綺麗にハモった。そして、水が器官に入りむせるおれの横でヒソヒソと話し始めた


「雑貨屋の女の子って、あの子でしょ?まだ小さい…」

「えぇ、確かに可愛らしい子だけど…」

「……………ロリコンだってばよ」

「しかもあいつ、婚約がどうだの言ってたよな」

「「…言ってた」」

「………………犯罪だってばよ」





「げほっ…」


ま、またあいつら好き勝手言いやがって!しかも人が気にしてることをよぉ!


同期の冷めた視線を全身に浴びる。何故だろう、理由がわからねぇが視界がボヤける。あ、むせてるからか、そうかそうか


「ハハッ…」と笑いをこぼし、ゆっくりとチョウジの横に腰を下ろした。ちなみに他のやつらまだ後ろでヒソヒソとやっている


「……なぁ、チョウジ」

「シカマル、肉焦げちゃうよ」

「…………………」


…うん、そうだね


反応されるのも悲しいが、無反応も悲しいぜ。なぁ親友


相変わらずのスピードで平らげていく友の隣で、一枚一枚味を噛み締めながら肉を食べていった





同期からの攻撃


「カカシ先生がまともに見えるってばよ」「そうね…」「ロリコンはねーよ」「班員に犯罪者がいるなんて落ち着かないわ。ねぇチョウジ」「そんなことより今は肉!」「ははは、煙が目に染みるぜ」



ロリコンの目にも涙