なんでおれぁ、また中忍試験の監督をやらにゃならねぇんだ?あぁ?


全身から「めんどいだるい、やりたくない」とオーラを出し木ノ葉を歩く。

ぶっちゃけ、監督はしかたない。これも任務のひとつだ


でもな、こっちはもう新米でもなんでもないのに


「なんでまた木ノ葉の案内しなきゃなんねぇんだよ…」


つーか、いつものやつよこせばいいじゃんか。なんでまた今年は人を変えてきた、砂の忍ども


少しも隠すことなく盛大にため息をする。その様子に今回の使者は、頬を引きつらせながらおれの横にならんで歩く


「悪かったな、テマリじゃなくて」

「……いや、別に誰が来ようと構わねぇんだが…案内おれじゃなくてよくねぇか?」


「こちとらこの前まで任務行ってたんだぞ?」と愚痴ってもどうしようもない相手に言うと向こうは「おれもこの前まで任務してたし」と返ってきた。そうか、文句言うなってことか


「息抜き代わりに任されたんじゃねーの?おれもお前も」

「…なんの息抜きにもなんねぇよ」


てか、息抜きって。お前、この仕事の大変さ知らねぇな?


今はこうして里案内なんてものが出来るが、後半になると里から姿を消したくなるほど忙しくなる。多分今回あの女がこなかったのも、その苦しみを知っているからに違いない。チクショウ


そんなおれの気持ちを知らずに、横で呑気に「団子食いたいじゃん」とほざく次男坊。軽く殴りたくなったが、無言で甘味屋を案内した







「醤油とみたらし一本ずつ。お前は?」

「おれ、茶ぁだけでいい」


注文を受けた店員が奥へと消えていく。すぐに戻ってくるだろう


いいかカンクロウ、こうしてられるのも今のうちだからな

しっかり味わっとけよ


ずずー、と忠告しながら茶をすする。もちろん言葉にしていないので相手に届くことはなかったが


「…しかし、何が悲しくて野郎二人で団子食わなきゃなんねぇのか」

「おい、あんたが来たいって言ったんだぞ」

「そうだけどよぉ…」


チョウジとよく食いに来ているためおれは抵抗もなにもないが、目の前のこいつは周りの視線を気にしている。なにこいつ、めんどくさい


これ以上声をかけても意味がない、と判断したおれはカンクロウが食い終わるまで空を眺めることにした







あー、最近こうして空眺めてなかったな

…ある意味この時間をくれたこいつに感謝、か


しかし、この疲れを癒すには何かが足りない。とても大事な、何かが


「はっ…」思わず笑いがこぼれた。何か、なんてわかりきっているのに

もし今ここで会えたならおれは今回の中忍試験の監督、がんばれるかもしれない。なんて確信のないことを呟いた












「あ、シカマル兄ちゃんだ」

「……………あの娘、」


突然耳に飛び込んできたかわいらしい声。求めていたそれに、半分閉じかけていたまぶたがカッと見開いた


どうしよう、今ならおれ神様信じられっかも

まじ頭、地につけながら崇めるわ


声のする方に視線を向けると、母親と仲良く手を繋いでいるあの娘の姿が。もう空とか見てる場合じゃねぇ


緩む頬を頬杖をつきながら隠し、おいでおいでと手招きをする。するとあの娘は母親と一言二言会話し、こちらに駆け寄ってきた(あー、がんばれる。マジでがんばれる。)(今ならS級任務も楽々こなせるわ)


「お久しぶり、です」

「おぉ、いい子にしてたか?」

「うんっ」


ホント、可愛いんだけど

可愛い可愛い、あの娘可愛い


彼女の笑顔には不思議な力があるらしく、先程から頬を引き締めようとするも一向に直らない

脇に手を入れ持ち上げると、軽いあの娘は簡単に持ち上がった


「あの娘も団子食べっか?」

「いいの?」

「一本だけ、だけどな」


あの娘がこちらに駆け寄ってくる際に、母親が「しばらくあの娘をお願いします」と頼んできたので、しばらく預かっていてもかまわないだろう

向かいに座るカンクロウが何か言いたそうな顔をしていたが、全力でスルーした。今はあの娘とじゃれ合いてぇんだよ


「兄ちゃん、お仕事?」

「んー、まぁそうだな。大変だけど、がんばってんよ」


「お疲れ様」笑顔でそう言って、頭を撫でてくるあの娘。おれの足の上に乗せたが、身長差は対して縮まっておらずこちらが屈まないと届かない


頭を傾け、近付いた互いの顔。「あ、これ以上はヤバい」と思うも、あの娘から発せられる匂いにブレーキをかけ損ねた


あの娘の母親に、信用されて預けられたのに…あー、どうすっか

いや、でも…無理無理無理無理無理


これ、止まんねー











「……お前って、ロリコンだったんだな」


ガンッ!!!


「…い゛ッ!!?!」







「……………おっと、つい反射で」


あの娘の乗っていない方の足が持ち上がった。反射で、勢いよく上がったそれは手前に座るやつのすねにクリーンヒットしたようで、顔を伏せて痛みに耐えている





「?」

「あー、なんでもねぇ。気にすんな」


確かに(あの娘限定の)ロリコンかもしれないが、他人に言われるのはどうも腹が立つ

それでも今回の暴走が止まったことには感謝しているので、団子代はおれが持つことにした





怒りの脊髄反射


「おいしー!シカマル兄ちゃん、ありがとう!」「おー、口にみたらし付いてっぞ」「え?」「ククッ…ま、後で兄ちゃんが取ってやるよ」「…お前ら、それおれの団子、じゃん」



被害者第一号