「なーなー、シカマル!」
「んだよ」
「好きだ!」
「…ハァ?」


と、こんなやりとりを約十年程前に交わした。その時は本当こいつ何言ってんだろう、暑さで頭やられたのか、等と結構真剣に心配したものだ。まぁ、今となればアイツは俺に告白したことなんて忘れてるんだろう。ほんっと、めんどくせーのに忘れられなかった。寧ろ忘れようとする方が面倒だったし、大変だった。というか忘れられなかった。腹ん中で忘れたくないと思ってる俺が居たため七年程前から諦めている。


「お、シカマルおかえりー」
「おう、ただいま」


もうコイツが俺の家に居るのはいつからか当たり前になった。もちろん疑問に思ったり否定しようとしたりはしなかった。コイツが居て安心してる俺が居るのが事実だからだ。


「任務お疲れー」
「あぁ、お前の任務はどうしたんだよ。名前」
「んー、今日もなんかつまんないのだった」


まだ中忍のコイツは任務と言ってもそれなりのことしかやらせてもらえない。俺はイルカ先生みたいな、教えるのが似合うと思う。コイツ、子供に好かれる性質だし。


「ねぇ、シカマル」
「ん、なんだ」
「面倒かもしれないけど聞いて欲しいんだ。俺、ずっと前、多分十年くらい前に、シカマルに告白したの覚えてる?多分忘れちゃってるよね。俺の気持ちはあの時から一ミリたりとも変わってなくて、そのー、シカマルが好きです。こうやってシカマルが任務を終えて帰ってくるのを待ってる時間も好きだし、シカマルが怠そうに帰ってくる姿も好きだし、こうやって話を聞いてくれてるシカマルが好き、大好き。出来るもんなら付き合って所謂恋人ってやつになりたいけど、きっとそれは面倒だと思うんだ。だからこれから俺を傍に置いて欲しい、です」


ごちゃごちゃうるせぇ、めんどくせぇ。コイツは忍者だってのに誰に対してもペラペラと語りだす。お喋りなコイツと面倒臭がりな俺。言葉は9:1かもしんねぇ。けど俺には面倒臭いこと以上に大切な名前が居る。その、つまり、愛ってやつだ。こんな女々しいクサイことわこんな奴に言ってやるのはどうしようもないくらい、これ以上ないくらい面倒臭い。


「俺も、好きだ」



この言葉と、お前の背中に腕を回して抱き締めたこの行為、これで十分じゃないか。


「本当、面倒臭がりだなぁ」
「慣れてんだろ」
「シカマルだけを見てきたからね」
「…そうかよ」


めんどくせぇ。コイツは俺を知りすぎてて慣れすぎてて好きすぎる。あぁ、めんどくせぇくらい好きだ。