ぐるぐる、あぁ、もう手遅れ。俺の肺の中はもう真っ黒だろう。こんなバカみたいに値段と中毒性の高いものを好む奴はみんなバカだ。もちろん俺も例外じゃない。しかしバカな政府はまた値上げをするらしい。全く、他にもたくさんやることがあるだろうに。これだからバカは。


「分かっときながら禁煙出来ひんお前はもっとバカじゃ、ボケ」
「せめてバカかボケのどっちかにしてくれよ」
「それは名前がバカでボケやからしゃーないっちゅー話や」
「言いたい放題だなコノヤロウ」
「そんなんはよ止めや」
「自分で買ってんだからいいだろ?」
「ほな、俺のために…」
「ん?」
「俺のために止めたらええやろ…」
「…ははっ、それは予想外。けど、謙也のためを思ってわざわざ外に出てるっていうのに自ら近付いてくるのは謙也の方だろ」
「…せやけど」
「けどもナニもなし。ワガママな謙也のために、先ずは本数を減らすところから始めてみるよ」
「ほ、ほんま?絶対やで!」
「はいはいほんまほんま」
「子供扱いすんなや」
「謙也は可愛い弟みたいなもんだからなぁ」
「あ、っそ」


謙也が俺のことをそういう目で見てるのは自覚済み。自惚れなんかじゃない。じゃなきゃコイツはこんな頻繁に俺の家に入り浸ったりしないから。謙也を支えてやりたい気持ちはあっても、俺じゃ謙也を幸せにはしてやれない。んー…人はこういう苦労を経験して大人になっていくんだろうね?きったない大人に。あぁ、俺の肺も腹ん中もきっとどろどろで真っ黒なんだろう。


「っていうか、関西人ならアホって言えよ」
「名前に合わしたっちゅー話や!」