…なーんか、俺ばっかり好きみたい。こんな俺らしくない考えは早めに捨ててしまいたい。けど止めたくても止まらない泥々とした黒い感情とため息。元はと言えば越前がいつものあの自信ありげな瞳で俺を見つめて「俺のモンになって」とか言ったからだろ。付き合い始めてそれらしいことも何もしてないけど、アイツ嫉妬はするし、独占欲が強い。


「ん?どうしたの、名前」
「不二先輩…」
「やけに暗い顔してるね」
「アハハ、そんなことないですよ」
「越前、かな?」
「えっ」
「フフフ、当たっちゃったみたいだ」
「…そんなんじゃないっス」


嘘だ。桃先輩に肩を組まれ、近付いた先輩と越前との距離に少なくともイライラはしてる、かも。なんか最近の俺はこんなことばっか。告白してきたのはそっちのくせに、なんで俺ばっかが嫉妬してんだよ、俺ばっかが好きみたいじゃねーか。


「へぇ」
「っわ、不二先輩、」
「これ後ろから見たらまるでキスしてるように見えるだろうね」


急に迫ってきた整った顔に驚く。多分、こんな近くで見たのは初めてだ。不二先輩が目を開きクスリと笑った。青い瞳に全て見透かされているんだと思った。すると急に腕を引っ張られ、気付いた時には先輩との距離は開いていて、先輩の目は閉じていた。引かれた腕の先には、越前。

それも明らかに機嫌が悪そうな。


「やぁ、越前」
「…何してんスか」
「ゴミを取ってあげてたんだ。ね、名前」
「あ、はい!」
「…ふーん。もうコイツにゴミだろうと何か付いてても気にしなくていいんで」
「は、なんだそれ」
「名前は、俺のモンなんで」
「誰のモンとか関係ないんじゃないかな。最後は名前の気持ち次第ってこと」
「…自信あるんスか」
「まぁね」
「俺、負けない自信ならいくらでもあるんで」
「奇遇だね。僕も負けない自信あるんだ」


見えないけどバチバチと火花が散っていそうなこの二人をどうしたらいいものか。俺には先程の黒い感情なんかよりも部長に見付かる前にこの二人を離さなくてはと思っ、アハハ、部長おはようございます。