「…名前先輩、っスか」
「おう、越前おはよ」
「おはようございまーす」
「桃、おはよう」
「…えっと、名前先輩っスよね」
「おう」
「おっはよー」
「英二、おはよ」
「おは、って!ななななな何で、名前眼鏡掛けてないの!?」
「朝ボーッとしてたら踏んで変形しちゃったんだよ」
「だ、だめだめだめ!越前に桃!名前のこと見たらずぇったいだめだかんな!」
「何でっスか」
「だめなもんはだめなの!」


朝練ギリギリで行けばもう殆んど皆来てて、挨拶を交わしながら部室に入れば大好きな名前に挨拶をされた。嬉しくて笑顔で返してやろうと思うと、いつもあるはずの名前の眼鏡がなかった。つまり、素顔の名前。コンタクトにするのは面倒臭がって中二くらいから眼鏡を掛けるようになった。

越前も桃も名前の方見てるし!み、見んな!名前の素顔見ていいのは幼なじみの俺だけなんだからな…!一日くらい眼鏡がなくても平気だ、と名前は言うがお前は良くても俺が平気じゃないんだよっ。気付けよ!…と心の中で悪態をつくけど名前は中々の鈍感なので気付くはずもなく。


「…名前の素顔は俺だけのなのに」
「…は?そんなことかよ」
「そんなことじゃない!俺には重要なことなんだって…」
「…はぁ、まだまだコンタクトには変えられそうにないな」
「う?」
「英二が嫌がってんだ。そんなこと出来ねえよ」


切れ目な鋭い名前の目だけど、やけに優しく見えた。なんでこんなにかっこよくて優しいんだろ。大人っぽいし。「さ、朝練行くぞ」と腕引かれながら部室を出る。あの生意気な後輩達は珍しく空気を読んだらしく、部室を出た時には俺達が最後だった。


「ま、今日一日は我慢してくれよ」
「んにゃっ!?て、手塚の眼鏡とか」
「手塚に迷惑掛かるだろ。それに度が合わない」
「うぅ…」


今日一日、名前の側にずっと菊丸が居たことは言うまでもない。