中庭にある大きな木の下は俺と先輩の特等席。晴れてる日は暖かくて、木が影になって中々居心地が良い。多分先輩は来るだろうから今日は俺が先に陣取ってやろうかなと思って若干寝不足の目を擦って中庭まで来た。


今日も寝心地は最高。今は五限、昼飯食ってちょうど眠くなる時間。俺のクラスは数学。うん、いいや。数学嫌いだし。考えんのもめんどくせーし。あ、先輩まだ居ない。ふぁ…。でけぇ欠伸も出たし、寝るか。人間から睡眠を奪ったらダメでしょ。うんうん。言い訳を良い様に捉えて寝る体制に入る。





「おい、慈郎、名前」


「…ん、あ、跡部先輩」
「授業サボってこんなとこで寝るとは良いご身分だな」
「おはようございます…」
「チッ、樺地、連れてけ」
「ウス」



「んあ?あ、名前だ」
「ジロー先輩、おはようございます」
「今日は先越されたけど、名前の隣で寝るのチョーきもちE…」
「先輩また寝るんスか」
「お前ら、樺地に背負われてても寝んのか」
「ジロー先輩だけですよ」
「変わんねぇよ」


「お、ジローと名前来たぜ」
「アイツらも懲りねぇな」
「性格は真逆だと思うんですけどね、先輩と名前」
「あ、ちょたおはよう」
「今日もサボったでしょ。先生が次は課題出すって」
「えー…」
「授業出たらえぇ話やん」
「忍足先輩、おはようございます。授業面倒なんスもん」
「そんなん授業出て寝といたらえぇねん」
「んー、でもなぁ。ジロー先輩と寝るの気持ち良いんですよね」



その言葉に先輩が「破廉恥やなぁ」と呟いていたけど、そんなやましいことは残念ながらしてないのでとりあえず、にっこり笑っておいた。

先輩の柔らかい髪がふわふわしてて、なんだか良い匂いもするし、暖かいし。いつも先輩は俺の肩に寄りかかって寝てるらしいんだけど、それも俺の特権みたいなものだし。



「んーっ、はぁ、寝たりない」
「先輩、跡部先輩がグラウンド走ってこいって」
「めんど…行こっか」
「はい」



グラウンド走って、途中で俺達がサボってどっかで寝るのも分かってるくせに走ってこいって言う跡部先輩は抜けてるのか狙ってるのか分かんないけど、走る時も寝る時もジロー先輩の隣に居るのは俺。


「名前、名前」
「なんですか?」
「好きだよ、チョー好き」
「…俺も、です」
「今日先越されたからお返し〜」


へらっと笑う先輩の顔を見るのが恥ずかしくて視線を逸らした。告白を先越されるなんて、流石先輩。一枚上手でした。「照れてる?照れてる?かわいEー!」と顔を覗き込まれたからダッシュでコートへと戻った。


「絶対、先輩倒す」
「あぁ?名前、コート入れ。俺様が相手してやる」
「…いや、跡部先輩はいいっス、ちょ、引っ張んないでくださいよー」
「そうそう、跡部。名前は俺と試合すんの!」
「あ、ジロー先輩」
「あん?お前ら二人まとめて勝負してやる」
「よーし、名前!絶対勝つ、跡部なんかに負けないC〜」
「はい!部長の座はもらいます」
「ハッ、大口叩いてられんのもそこまでだぜ」



跡部先輩にこてんぱんにされて、部長の座は奪い取れなかったけど、悔しそうな素振りは見せずに興奮したのか元気になったジロー先輩の視線を奪い取れたから良しとしようかな。

「スゲー!名前ってそんな強かったんだな!チョーかっこいE!」