何にもしらないくせにどうしてそんなこと言えるのか分からない。あんたは知らないだろ。俺が何をしてきて何を思って生きてきてこれから何を感じて生きてくかなんて。知られたくもないんだけど。



「放して下さいよ」
「っ、誰が放すかよ!お前、何考えてんだ!」



ちらりと視界の隅っこに映ったネオンの輝きが瞼の裏から剥がれない。まるで目を焼こうとしているみたいだ。きっとそのうち光しか見えなくなる。カイジさんに掴まれ引っ張られた腕は酷く冷えていた。何故か分からないけどとにかく冷たくてそれが俺かカイジさんか分からなくなるくらい、冷たい。そもそも身体が冷えている。酒を飲んでいたのに、な。



「なんすか、だから」
「なんでお前があんなやつと歩いてんだ!しかも、」
「手を繋いで、身体を寄せ合って?」



きっと身体が固まるというのはこんななんだとカイジさんを見て思う。驚かなくても普通だよ。ここはそういう街じゃないか。カイジさんはどうせギャンブルしに来たんでしょうね、無い金をさらに無くすために。でも俺は違う。この身体ひとつで金を増やす。いつもみんなしてるじゃないか。働いているんだ。何を驚く必要があるのか分からない。



「お前……」
「カイジさん、きっとカイジさんには分からない」



俺は金が欲しかったんだ。金が欲しいからみんな働くんだろ。だから俺だって働いたまでなんだ。どんな方法であれみんな金を稼ぐんだ。だからカイジさんだって勝てもしないギャンブルに金を注ぎ込む。



「俺の家はお世辞にも裕福なんてもんじゃなかったから、中学から働きだしたんです。髪を染めたのは高校で、そのとき初めて声をかけられた。知ってました?髪染めるとああいうたむろしてるやつらみたいでなんかそそるらしいですよ。屈服させてるみたいで気持ちいらしいです。金も弾みました……カイジさん、俺はそれしか知らないんです」



驚愕の表情というのは実に傑作だ。けれど笑えないのはそれが自分に向いていて尚且つカイジさんだから。俺を救いたいなんて考えてたんだろう。ごめんねカイジさんそんなもの要らないよ。カイジさんの腕を引っ張って安いホテルに転がり込む。気が動転してるのかただついて来るだけのカイジさんを見てさっきと逆だと思った。



「カイジさん、俺はそれしか出来ないんだ」



ベッドに腰掛けてズボンと下着を下ろす。誰のものなんて知らない。だらだらと垂れてくるそれに目が釘付けになっているカイジさんはついに泣き出した。同情するなら金をくれ。いい言葉だ。



「カイジさん、俺はね」



たとえ満たされなくてもそれでよかった。満たされたいという気持ちがあるだけで正気でいられた。貰えるのが雀の涙と感じてもそれでもいつかは満たされると思ってた。



「ただ金が欲しかったんだ」





理由なんかそれだけなんですよ





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カイジ登場。








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