朝日に照らされた銀の髪はきらきらと輝いていて寝起きの俺には眩し過ぎた。まだ半分しか覚醒していない意識と、目を万事屋に向ける。もう万事屋は布団に座って俺をじっと見つめていた。そんな面白いものでもないだろう、人の寝顔なんて。窓から差し込む朝日はやはり万事屋の銀の髪をきらきらと輝かせる。そこでふと違和感を感じた。そして輝いているのは髪だけではなかったことに気づいたのだ。



「……なに泣いてんだ」



死んだ魚の目と言われ続けているその少し赤い瞳からは大粒の涙が流れていた。もういい年だろう。確か年は近かったと、思う。正確な年齢を聞いていないからはっきりと断言は出来ないが、まあ近いはずだ。そんな万事屋はただただ涙を流しながら俺を見ていた。流れ落ちた涙が白いシーツに染みを作り吸い込まれていく。



「夢を、見たんだ。昔の夢と、今の夢を」



ぽつりと誰に言うでもないように万事屋は言った。俺に向けているのだろうが、どこか遠くにも向けているようで少し居心地が悪い。ただ黙って万事屋の口から出る次の言葉を待った。



「人を斬っていくのに迷いなんか無かったし、そんなもん要らなかったんだ。ただ生きていくために前に進むために、俺にはそれしかなかった。でも、今、ようやくその迷いが必要になってきて、それのおかげで俺は今生きてる。でも、その迷いのせいで、また別のもんが無くなるんだ」



相変わらず涙は止まらない。まだ半分しか覚醒していない意識の中で、俺に出来ることはあったはずだ。でも俺はしなかった。意味の分からない万事屋にどういう意味だと問い掛けることも、ただ意識を手放して再び眠ることも。そしてその流れる涙を拭うことすら、俺には出来なかった。





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私的銀土シメージ。








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テーマ「人外ファンタジー」
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