無意味に女体化!









ごろりと巨体な獣が地面に転がる。胴体は見事に真っ二つに分かれてしまっていた。独特の血液の臭いと共に死臭が漂う。その二つに分かれた胴体の真ん中に、一人彼女は佇んでいた。



「……トリコ」



ここから彼女に声は届かない。彼女がいるのは大きく、分厚く出来た透明なアクリル板で出来たケースの中だからだ。その外で僕はただ彼女を見ている。
アクリル板にはたくさんの血液がへばり付き彼女の姿を隠そうとしているみたいに見えた。赤い血液に塗れた彼女の青い髪は更に映える。そんな彼女の顔を、見ることは出来ない。
ぱり、と乾いた音が聞こえた。ああ、限界だ。この空気を震わせアクリル板に亀裂を入れるほどの、彼女の空気。また暴走してしまう。抑えるためにあの巨体な獣と戦わせたのだと言われたが、果してそれは正解だったのか。結果は見ての通りだ。



「中に入れて下さい、彼女の元に行きます」



分厚いアクリル板の一カ所が開かれる。獣の死臭が更に強くなり、思わず眉を潜めた。それでも足を止める気は無い。一歩、また一歩と彼女との距離を詰めていく。
どうしてこんなことになってしまったのか。どうしてこんな風にならなければいけないのか。疑問ばかりが頭を過ぎり眩暈がしそうだ。考えたところで彼女が落ち着くわけじゃないしこの怒りが無くなるわけでもない。
手を伸ばせば彼女に触れられるだろう。だが今の僕で触れてはいけない。手に滴るその毒。



「おやすみ、トリコ」



たった一滴でも触れれば意識が遠退くほど、強いのだから。














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