しゅるりと布が擦れる音がする。白い髪と肌と正反対の黒。それがアカギの視界を奪う。痛々しいほどの赤い縄を首に、そして背中の方に回された手首に巻いた。なるべく緩く、けれど暴れて外れてしまわないように。慎重に縄を結び終えた。きゅっ、と縄が鳴く。



「へ、平気か?」
「……なんか、変な気分」



自由に動くのは足だけだった。ゆっくりと布団に寝かせる。ぱさぱさと髪が散らばる音がやけに大きく聞こえた。驚かさないように優しく身体に触れていく。肩を、首を、頬を。髪に指を通しながら唇を合わせた。小さく震えるのは、やはり視界が見えないせいか。



(……優しく、しなきゃな)



唇を離し、また近付ける。舌で唇を撫でながら、また合わせて舌を吸った。しばらく唇を合わせたせいか息が上がって、俺とアカギの息遣いが部屋に響く。頭がぼうっとする。息を吸って、ゆっくりと吐いた。視線をアカギに向ける。同じように息を整えているアカギの顔は珍しく赤かった。口の端から流れる唾液を舐め取る。



「っ、あ」
「……アカギ?」



きゅっと口を閉じ身を固め始めたアカギに驚きと困惑が混じる。今、何があったのか。そう思いながら唇を合わせながら服に手をかけた。前を開けて、直に触れていく。痩せているわけでもなく、しかし肉がついているわけじゃない。女みたいに柔らかい線を描いているわけでもなく、しかし固いわけじゃない。吸い付くようなその不思議な肌に痕を残しながら触れていった。下着と一緒にズボンに手をかける。生唾を飲み込む音が、やけに大きい。


「す、けべ」
「どっ、ちがだよ!」



かっとなりながらアカギ自身に触れてやれば身体全部を揺らした。ああ、ほら、そうじゃないか。流れ出るそれが何よりの、溢れ出るそれが何よりの、証拠。弱く触ればじれったいと、強く触れば激しいと。揺れる腰の後ろにある手が布団を掴む様が視界の隅に映る。ちかちかと白い肌に赤い縄が目に痛かった。それから視線を下げて、もういいだろうと後ろに触れる。逃げる腰と、開くのを拒む足を押さえ込んだ。



「あ……ぁ、ぐ」



アカギを俯せにすると、よく赤い縄が見えた。首から、手首にかけてたった一本の縄がアカギを服従させている。緩く、けれど暴れて外れないよう縛ったその縄は始めと変わりなく静かにそこにあった。たった、一本の縄。それだけで人は抵抗出来なくなる。たとえアカギでも。



(あぁ……まずい)



縄をくい、と自分に向かって引いてみた。抵抗出来ないアカギは首を上げ、手首を上にずらして縄を緩める。本能的な、動き。



「な、……に」
「……あ」



そうだ、アカギには分からないのだ。俺が次に、今、何をするのか、しようとしているのか。目も眩むような衝動に身を任せてその背中に身体を合わせた。荒い息が、さらに荒く、熱くなる。アカギの手が逃げるように俺の腹を押してきた。けれど大した力も無く、目の前の縄を噛んでみると力が抜ける。首に巻かれた縄と、白い髪の間にある僅かな隙間の白い肌に歯を当てながら俺は泣くアカギの声を聞いた。








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