「逃げられないよ」



にこりと自分ではありえない微笑を相手に向けるととても怯えるような顔をして体を揺らす。ひどいなと思いながら一歩前に進んだ。どうしてそんなふうに怯えるのか。どうしてそんなふうに逃げていくのか。べつに、いつものことなんだろうけど。



「な、んで、お前が、俺と一緒なんだよ……!」



一緒だなんて誰も言ってない。似てるって、思っただけで口にした覚えは全くない。自意識過剰というのはこういうことを言うに違いない。気持ち悪い。だからあんたが嫌いなんだ。勝手に一緒だなんて、糞喰らえだ。



「違う。一緒じゃない」



ほら見なよ、片足がもうなくなってるじゃないか。飲み込まれてる。そんな俺はもう片腕しか残っていないけれど、別に怖くはない。だってこれが俺の道だ。けどあんたは嫌だろうね、まともだなんて言ってるうちはこの現状を理解できないまま飲み込まれて全部なくなる。とんだ笑い草。



「だって、あんたはまだまともでいたいんだろ?」


片腕が無くなる感覚がする。痛みはないけれどおかしな感覚だ。それでもいい、俺の道だ。今更変えようとは思わないし、そもそもそんな気はない。むしろ心地いいなんて感じるんだから、あの人は相当おかしなやつだと思っているんだろう。きっとそれが正解なのだろうけれど、俺はそれが正解かどうかを確かめる術はないから関係ない。それよりも重要なこと。



「俺は、お前とは違う……!」
「くく、はははっ、よく言えるな、そんな心にもないこと」



だってあんたは実際に食われてる、それが立派な証拠じゃないか。それでもあんたは認めないだろうけれどね。





食われている、食われていく。





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カイアカ未満。
カイジとアカギは似てたり似てなかったりするよねって話。
ギャンブルに向かう姿勢はたぶん真逆。








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