死にたくなかった。
「だから、なに?」
もともと俺は普通だったのだ。一般的な家庭より少しだけ荒れた家庭だったことは否めないが、それでも普通の家庭だった。それがなんの弾みで二十代という若さで死ななくてはいけなかったのか。
「お前のせいだ」
学校に通って塾に行って友達と遊んで、俺はそういう普通の学生だった。そこでたまたま麻雀を知って、自分の記憶力を使い勝ってきただけ。それから、おかしくなってきたのかもしれない。
「お前さえ、いなければ」
何かしらの弾みで安岡さんに声をかけられて、代打ち生活が始まった。儲けもいいし、いつも通りやっていけば大概勝った。ただ一つ、俺は赤木しげるとしていなければならなかったのだけれど。
「俺は、平山幸雄だ」
「知ってるよ」
あの時負けていなければ。あの時鷲巣の勝負を受けていなければ。あの時、あの時、あの時
「お前が!お前がいなければ俺は死なずにすんだんだ!浦部と戦うこともなく、鷲巣と戦うこともなく、死ぬこともなかった!なんで俺がっ、俺が死ななきゃいけないんだよ!俺はまだ何も成してないのにっ、俺は、生きたかったのに!何も死ぬことなんてなかったんだ!お前が、お前さえ生まれてこなければよかったんだっ!」
生きたがりの遺言
(それは全てお前が選んだ道だったろうと、赤木しげるの目は語っていた)
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八つ当たり凡夫。