「寂しいものだな」
赤木さんの手を涙で濡らしているとそう言われた。いや、言われたわけではないのだろう。ただ、呟いたのだ。誰に言うわけじゃない。今赤木さんの目に俺は映っているのだろうか。それを思うとまた涙が溢れてきた。赤木さんの手を握りしめ、俺はまた泣く。
「はは、泣きすぎだろ」
「う、せ……」
泣かずにいられるのなら、泣かない。それが無理だから俺は泣いているのだ。ああ、それにしても暖かい。暖かい手だ。
「忘れちまうのが、こんな感覚とは知らなかったよ」
ただ寂しいと赤木さんは言う。俺は、そういうことが今までに無かったからよく分からない。けれど、それがもし赤木さんを失うのと同じなら、俺には堪えられない。辛い、苦しい。きっと絶命だってしてしまう。見たくない現実。悲しい。
「この手の温もりだって、きっと忘れるときがくる」
思わず赤木さんの身体を抱きしめた。力の加減は出来ない。どうしてこんなことになったのか、誰か教えてはくれないのか。俺はどうすればいいのか。答えを知っているやつはきっといないのだろうけれど、願うしかないのだ。
「……赤木さん」
ああ、寂しい。一人だ。人はもともと一人だと知っていた。けれど繋がることが出来る。俺と赤木さんは、もう繋がることは出来ないのだろう。
手の温もりを忘れる寂しさよ