お嬢さん注意!










眠る彼女の横で水を飲みながらどうしてこんなことをしたのか今一理解出来ないでいた。気に喰わなかった、というのがきっと一番の理由だ。あの腐った会長サマの娘。しかも十代。ふざけてやがる。じじいはさっさとくたばって棺桶の中にいればいい。それだけで世界が平和になるのだ。そんな会長サマの娘。父親に似ているのは性格だけだった。見た目は違う。容姿端麗とまでは行かないがそれなりだ。普通、と言ってしまえばそれだけになるのだろうがどこか華がある。母親の存在を俺は知らないが絶対に母親似だ。でなければならない。世界の秩序のためにも。最も性格も母親似がよかったものだ。ただ全てが父親というわけじゃなかった。金を邪魔だと言って使うだけ使い決して増やそうとしているわけじゃない。父親は金はあっても足りないと言っているのに。そんな彼女を俺は抱いた。どういったいきさつかなんてほぼ覚えていない。否、覚えている。彼女の買い物に付き合わされ部屋に荷物を置きに来たときだ。夜も深夜と言ってもいい。そんなときに彼女がお前は綺麗な顔をしているんだなと言ったのだ。からかったのだろうが俺は大人の対応で彼女の方が綺麗だと言った。そしたらどうだ、お世辞だけど嬉しいなと言って笑ったんだ。綺麗に、まるでそこだけ花が咲いたように。俺は呆けながら彼女を見ていた。気付けば彼女が近くまできていて呆けている俺をどこか心配そうに見ていたのだ。彼女を掻き抱くようにして無理矢理唇を奪った。もちろん彼女は抵抗したがそんな十代の女子供の力でどうにかなるものじゃない。どうせ初めてじゃないのだと考えて、あとは今に至る。不思議と後悔らしい後悔はなかった。あるとすればやはり彼女が初めてではなかったことだろうか。何故か不可思議な幸福にも似たような感覚もある。不思議だ。



「ん……」
「あ、起きました、か」
「……いちじょ、水」



所望された水を差し出しながら彼女はなんとも思ってないのだろうかと考えて、止めた。きっと意味はない。一夜の過ちとして過去に、闇に葬りさられるのだから。そう思うとなんだか胸が痛くなった。恐怖からなのだろう。そう考え決め付けた。



「一条」
「っ、はい、何でしょう」
「今日、買い物行くから、荷物頼む」



ベッドから立ち上がりバスルームに向かう彼女の足は覚束ない。それに手を貸してバスルームに送り届けると俺は意味の分からない脱力感に腰を抜かし床に沈み込んだ。








「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -