愛していたわけじゃなかった。ただ笑ったときの顔がたまに見かけるあの野良猫が、目を細め笑っているように見えたときの顔と似ていたのだ。もちろんそんなことは関係ない。
頭に巻いた包帯の下にはたくさんの傷がある。じくじくと痛むその包帯の下に俺の耳はない。手に巻いた包帯の下には一本の傷がある。じんじんと痛むその包帯の下に俺の指はない。欠損した身体を引きずるように前に一歩、また一歩と進んでいく。疲労困憊とはこのことなのだとろくに生きてこなかった二十年の人生を思い浮かべながら考えた。ならあいつはどうだったのだろう。
昔学校の倉庫で見た青いビニールが広げてある。その中心には不自然な出っ張りがあり、よく見れば人の形をしていた。きっとこれを見たやつら十人中十人は人の形だと言わないだろう。当然だ、人がこんな安いビニールの下にいるはずがない。俺は知っている。
この下にあいつはいるのだ。頭は砕け顔は潰れ手足はありえない方向に曲がっている。外からは見えないが内臓は無残にも破裂し肉片になっているはずだ。とてもビニールを退かそうとは思えない。
たまに見かけるあの野良猫の、目を細め笑っているように見えたときの顔がちらついた。あいつは確かにそうやって笑っていた。





猫のように笑う君の影がちらついた夜のことです。





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カイ佐は恋人未満というイメージが強い。
さらに報われないイメージが強い。
佐原好きだよ。








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