「頼むから、放っておいてくれ」



彼は僕に馬乗りの状態でそう言った。つまり僕は押し倒されているということだ。いや違う。問題はそこではない。別に僕は彼に対し嫌なことをしたわけではない。ただ僕は彼に僕の胸に秘めた思いを伝えただけだ。
彼は彼であって彼ではない。僕が好意を抱いている彼はフリッピーという人物だが彼ではない。僕は彼の中にいるもう一人の彼に好意を抱いているのだ。普段のフリッピーはいつも穏やかだ。誰にでも優しく面倒見もいい。子供達にも大人気な彼。しかしもう一人の彼はもう一人の彼とはまったく正反対の人だった。すぐに怒るし人を殺してしまう。けれどそれは彼のせいではない。きっと軍にいたときに辛いことがあったのだろう。
しかし僕は感謝しなくてはいけない。なぜなら彼とこうして出会えたからだ。もし彼が軍人ではなくてそんな辛いことに出会っていなかったら彼に出会えていなかったのだから。こんなことを言ってはとても不謹慎かもしれない。だが事実なのだ。



「ふざけたことぬかすな」
「しかし君を愛していることに変わりはない」
「俺はお前が思ってるようなやつじゃないんだ」



僕に馬乗りのままの彼はそのまま俯いてしまった。一瞬だけ見えたその顔はとても悲しそうな顔をだった。
彼はどうして頑なに拒むのだろうか。もしかしたら今まで人を殺してきたことが原因なのかもしれない。そんな罪深き自分が人から愛されるなんて。そう思っいるのかもしれない。もちろん確証はないけれどそう考えるのが一般的だと思う。けれどそれは彼を愛してはいけないというわけではない。寧ろ彼を愛し続けることが彼を助けることにも繋がるかもしれない。そう考えれば考えるほど僕が彼を愛する気持ちは大きくなっていく。
僕は今にも泣きそうな彼の唇を奪った。そっと触れるようなキスにしようと思ったが勢いがつきすぎて歯と歯が当たってしまうという失態を犯してしまった。彼はしばらく動かなかったが突然腰にあったナイフで僕の頭を刺してきた。






愛したって
いいじゃないか!





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