悪魔が二人居るのだと、俺は目の前の光景をそう受け止めた。



「カイジさん、どうしたの?」



白い悪魔が俺に囁く。優しい口調とは裏腹に、目は真っ赤になっていてぎらついている。まるで獲物を狙う動物みたいに。そんな白い悪魔を、白とは対象的な黒い悪魔が抱きかかえていた。まるで自分がこの世の王だとでも言うように、豪華な装飾の椅子に座っている。



「何を恐れておる?これはお前が望んだ結果だ」
「そうだよ、カイジさん。これはあんたが望んだことだ」



悪魔は囁く。ただ優しく、俺が決断するのを。ただ、優しく。それが恐ろしい。いっそ決めてくれればいいだろう。俺が決断する間もなく、悪魔が全てを決めればそれでいいはずだ。それで、全て終わるのだ。それでも白と黒の悪魔はただ優しく囁くのだ。



「あんた達はいつもそうだ、嫌なことは全て俺たちに押し付ける。そうだろ?」
「だから儂らはお前たちに与えるのだ。選択を、選べるという自由を」
「俺たちだけが悪いなんて、そんなのあんまりじゃないか。ねえ?」



白い悪魔がふわりと俺の前に立つ。黒い悪魔とは対照的だ。とても綺麗で、悪魔とは思えない。囁く言葉は優しく、それでもやはり本質は悪魔なのだ。俺たちを、優しく、甘く、連れて行く。見えない暗闇へ、ただそれだけ。



「ねえ、カイジさん。欲しいんでしょ?」
「首を振ったところで無駄じゃ。握っているじゃないか、ほら」



はっとして白い悪魔から離れる。手には確かに温もりが残っていた。異常な速さで動く心臓を、その手で押さえ込む。白い悪魔は笑ってそんな俺を見ていた。目を細め、口元に孤を描く。それから俺に背を向けて黒い悪魔の元に駆けていった。その後ろ姿でさえ、目を引く。



「物欲しそうな顔じゃな」
「そんなに欲しければ、選択する道は一つだよ」
「簡単なことだ、儂に勝てばそれで全てが終わる」
「ねえ、カイジさん。しようよ、ギャンブル」



差し出されたその白い手を、俺は握る術しか知らない。








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