きっと俺は井川さんにとって、何かしらの大切なものになれないのだと直感がそう告げていた。
「井川さん、井川さん」
「……あ、すみません」
「どうかしたんですか?」
「考え、事です」
ふとどこかに視線を向ける井川さんの目はとても不思議な目だった。俺はそんな目を知らないしきっとそんな視線を俺に向けることはないと思った。
井川さんと知り合ってそれなりに時が経つ。それでも俺が持っている井川さんの情報は少ないし、井川さんも俺の情報をそんなに持っていない。知り合い以上であることは確か。友達であるとは思う。でもそれだけだ。
けれど時たまさっきみたいに視線をどこかに向ける仕種を俺は知っている。その視線の先に何があるのか知らないけれどいつも決まった方角だった。その方向になにがあるのか、俺はまったく知らないし知る日は来ないのかもしれない。
「そうですか……あ、コーヒー飲みます?」
「いただきます」
「どうぞ」
あの視線の先に何があるのか知らないし俺に知ってどうこうというわけじゃない。けれどせめてその欠片だけでも知りたいと思うのは何故なのだろう。
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ひろゆき→赤木前提話。
視線の先には赤木さんのお墓だったりなんかしちゃったり。
初ひろ岸がこれって。