源田が女の子注意!
捏造設定ばっかり。









「なんで親父さんのパーティー行かなかったんだよ」



ソファーの上でペンギンの形をしたクッションの、ちょうど頬っぺたを摘んでいる源田に声をかけた。正確には、親父さんが経営している会社のパーティー。何周目年記念パーティーとかいう名前だった。源田の親父さんはもちろん、おばさんも出席していて、俺の親父も源田のところとは古い付き合いだから夫婦揃って出席。鬼道のところとも会社で協定を結んでいるとかで、鬼道の親父さんとおばさんと鬼道も来ていたのだ。それなのに源田はいなかった。親父さんのパーティーなのに。源田は相変わらずペンギンの形をしたクッションの、今度はクチバシを突きながら口を開いた。



「行こうと、思ったんだ。でも、なんか……」
「体調でも悪かったのか?」
「……違う。似てるけど、違う、かな」



意味が分からず変な声が出た。それを面白そうにすくすく笑う源田に腹が立って、今度は違うペンギンの形をしたクッションを投げた。一直線に顔に当たるだろうと投げたクッションだが、ゴールキーパーをしている源田には通用しなかった。両手でクッションを掴んだ源田は、掴んだクッションを横に広げる。やめろ、伸びる。いや、伸びるかどうか知らないが。



「服、着たくなかったから」
「服?」
「パーティーって正装するだろ?だから制服でいいかな、とか考えてたら母さんがドレスだって言って……」
「ドレス、着たくなかったのか?」



たまに俺も、親父の友達とか会社の人とかのパーティーに行く。そこにも俺みたいに親父やお袋についてきたってやつらがいて男はスーツ、女はドレス。みんな一緒だ。けど、特に女はドレスがすごい。なんて言うか迷うが、自分に似合うモノを知っていてそれを綺麗に着こなすのだ。まだ俺と同じ中学生なのに。けど大人には敵わない。でも俺みたいな中学生からしたら、十分過ぎるくらいに大人だと思えてしまうのだ。みんな自分を可愛く綺麗に見せたい。可愛く綺麗になって、それからは知らないけれど女は可愛くて綺麗になりたいもんだと俺は思う。



「着たい……かも」
「なら着ればいいじゃん、べつに。あるんだろ?」
「……あるけど、駄目なんだ」
「なんで?」



女は可愛く綺麗になりたいもんだと俺は思うと思ったが、それはもちろん万国共通というわけじゃない。あくまでも一個人としての意見だ。だからべつに、私は可愛くも綺麗だとも言われたくも見られたくもまして自分からするなんてヘドが出るという女だっているのだ、たぶん。源田は俯いてペンギンの形をしたクッションのクチバシを突くのを止めて、クッションの端っこを掴んだ。今更端っこを掴んでもそのクッションに対して行ってきた悪行は消えないのに。しかもそれ俺がやったやつだし。セットで高かったやつだし。


「着ても、似合わない……から」
「……そういうもん、なのか?」
「背、高いし。腕も、足も、太いし。胸、邪魔だし。……可愛く、ないし」



ヒールを履いている女がいっぱいいた、と思う。露出の多いドレスが多かった、と思う。胸は未発達が当たり前、と思う。源田が可愛いとか綺麗とかは俺に、俺だけが判断していいのか、分からない。けど俺から見て、言ってみれば、もちろん俺の、俺だけの、一個人の考えであり意見であり、万国共通なわけはないからいいのだけれど。中学生の背なんて成長してるからしょっちゅう伸びたりするし、腕や足はみんな細くて触ったら折れそうで怖いし、胸なんかあっても無くてもみんな大きくなったり小さくなったりするし、可愛いとか綺麗とかは、やっぱり見た人が言うことだし。



「……着てみれば」
「え」
「着てみろよ。今、俺だけしかいないし、ちょっと気になるんだよ、ドレス」
「に、あわない、し」
「今さら恥ずかしいとか無いだろ。大丈夫だって、誰にも言わないし。見てみたいだけだから」
「けど」
「着たら……そうだな、お前俺ん家来たときに見てたライオンのクッションやるよ」
「……き、る」



源田がドレスを着るまで俺は部屋の外にいた。廊下にいて家の人に声をかけられたら大変だから、俺はベランダにいる。外は日が落ちてきたらしく、たぶんあと二十分くらいで夕焼けが見られると予想した。でも今の時間は六時で、普通なら家に帰らなきゃいけないんだろうけど家は近いし家族ぐるみで仲がいいからきっと気にしない。遅くなるなら携帯で電話して、源田の家にいることを言えばいいだけだ。ついでに宿題を見てもらえとも言われる。源田の方が成績いいっていうのを知っているからだ。というか、何故知っているのだろう。カーテンがシャッと鳴って開いた。けど源田の姿は無くて、とりあえず中に入る。源田は、何故かカーテンに包まっていた。茶色の髪がはみ出ている。



「いや、出ろよ」
「着たには、着たから」
「……ライオンクッション」
「ひ、卑怯、だ」



カーテンから出てきた源田はオレンジと黒のドレスを着ていた。肩と鎖骨が出てて、でも腕から中指のところまで布で隠れてて、足が見えない長いドレスだった。べつに変なところなんて無いのに。わざわざ仮病まで使って着たくなかったのだろうか。着たくなかったら今も着てないのか。なら、ライオンクッションの威力はすごい。ああ、そうだ、クッション様々、だ。



「……似合わない、だろ」
「べつに、変じゃないぞ」
「……嘘だ」
「悲観しすぎだろ……あ」



俺の予想より遥かに早く日が沈みだして、夕焼けのオレンジの光が部屋に入ってくる。窓から見える景色の上辺りは青いような紫のような黒に覆われていく。その様子と色が、源田のドレスと、源田自身にも似合っていて、思わず声が漏れた。



「佐久間?」
「……うん、似合ってるよ」
「は、あ!?」
「似合ってる」
「う、そ、だ!」
「本当だって。嘘ついたって得しないし。そもそも俺クッションやんなきゃだし」
「……明日、クッション持ってこいよ」
「明日もドレス着たらな」
「……明日の練習のとき、絶対全部のシュート止めてやる」



また見られるなら安いものだと思ったが、やっぱり似合っているし、可愛いとか綺麗とか思ったから、口元だけ笑うだけにとどめておいた。言ったら、たぶん着てくれないだろうし。ああ、もちろん可愛いとか綺麗とかは俺の、俺だけの一個人の考えであり意見であり、万国共通じゃないことだけは確かだから、そこを忘れないように。





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女の子が服を選んでるときって、たぶん一番可愛いんじゃないかなと思います。
着たい!でも似合わないから無理!でも着たい!みたいな葛藤をしている背中が可愛いしちょっと硬くなった表情とかも可愛い。
そんな欲望を女体化源田に表してみた。
似合うよ!その服はあなたに着てもらうために作られたの!と心の中で叫ぶ私はなんていう不審者。
しかし細い子を見ると足とか腕とかマジで折れるんちゃうか?と思います。私デブだからむしろ折られろって勢いだけどね!








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