アカギ女体化注意!
これ関係。








(……暇だ)



いつものように仕事、やくざの代わりに博打を終わらせた。金も貰い、ようやく帰れると思えば次はこっちだと突然腕を引っ張られながら着いた先は、大きなホテル。たしか、結構有名なところだったはずだ。しかしまだ開いていない。正確には、まだオープン前。一体こんなところになんの用があるのか。前を歩くやくざの一人に尋ねるが着いて来れば分かる、のそれだけ。
エレベーターに乗り、気がつけば一室に通された。部屋の中には二人の女性とたくさんのドレス。どうやら衣装部屋らしい。



「着替えろ。これから行く部屋には、それ相応の格好が必要だ」
「……そう、ですか」



扉が閉まったかと思えば中に居た女性二人に次々とドレスを手渡される。正直これからのこともドレスのことも興味は無いため、適当に決めて下さいと投げやりに言った。二人は少し戸惑ったようだが、いそいそとドレスを選び始める。
こんな衣装部屋があるくらいなのだから、これから行くだろう場所にはそれなりの地位を持つ人々がいるらしい。そうでなければこんな部屋など存在しないだろう。それに、私の目から見ても衣装がとても高級なものだと分かる。金持ちというのはどうしてこんなにも自分を着飾るのだろうか。見栄張り、というやつなのだろう。
二人はシンプルな黒のドレスと暗いワインレッドの羽織り、同じく黒のミュールと髪飾りを持ってきた。



「こちらのものでよろしかったでしょうか」
「ええ、ありがとうございます」
「では着付けを致します」



それから二人の手によって衣装を纏っていく。最後には化粧と髪をアップにされ、部屋を出る。時間がかかったかもしれない。小言を言われるかと思ったが逆に早かったな、と言われた。どうやら、普通はもっと時間がかかるようだ。
それから再びエレベーターに乗り、数階上がる。扉が開くと、辺りは薄暗く足元が少々不安だ。エレベーターから降り、前のやくざに続く。
薄暗い部屋にはいくつものテーブルがあり、そこに蝋燭が立ててある。その蝋燭がこの部屋の実質的な明かりと言ってもいいかもしれない。どうやら食事も取れるらしく、テーブルにはいくつもの料理が並べられていた。あまり食欲が湧くとは思えないのだが。
前を行くやくざは何人かと言葉を交わし、一つのテーブルに腰掛けた。私もそれに続き、座る。



「いい加減教えてくれてもいいでしょう?これから何が始まるのか」
「ああ、そうだったな。ここはいわゆるショーを楽しみながら食事が出来るところなんだ。ただし、VIP専用の」
「……どうして私をここに連れて来たんです?」
「そのショーが、少し特殊でね。アカギさん、貴女も興味が湧くと思って来てもらったんです」



ならばそのショーとやらの内容を話してから連れて来ればいいのに、どうしてこうも有無を言わさず連れて来るのか。小さくため息をつくと突然部屋全体に響く声が言った。これからショーが始まるのだと。
バッと目の前が動く。どうやらカーテンが落ちたらしい。その向こうには窓といくつかの画面、そしてビル。さらに鉄骨と、人だった。



「これは……?」
「言ったでしょう?ショーが始まるのだと」



ショーと言うのはゲームを見ているだけというものだった。ただそのゲームが、命懸けのものだということ。ルールは簡単だ、ビルとビルを繋ぐ鉄骨を命綱無し、鉄骨に手を着かずに渡り切る。ただそれだけの、単純なゲーム。しかし、落ちてしまえばまごうことなき死が待ち構えている。
参加しているのは10人。皆同じような境遇、つまり借金まみれということらしい。ゲームをクリアできれば一千万、二千万という金が自分の元に流れ込む。その夢を抱き、鉄骨を渡るのだと声は言う。



(暇、だ)



一人、人が落ちた。皆食事をしながら喜々としてその様子を見ている。何故こんな薄暗い部屋で食欲が湧くのか分からない。
一人、また一人と連鎖のように落ちていく。どうせなら、あちら側に行きたかった。そう言ってみると面白い冗談ですね、と返される。それなりに本気なのだが、きっとここに居る人間に私の本心など分からないだろうから言わない。無駄なだけだ。
死を目の前にした人間はとても輝いている。死を目の前に怯えながらも、生きたいと必死にもがくからだ。それを笑うのは、私には考えられなかった。
そして遂に一人が鉄骨を渡りきった。部屋に居る人達は各々感想を零しながら出ていく。渡り切るのは面白くない、いや逆に新鮮だったなどと。



「では帰りますか、我々も」
「……すみませんが、私は少し残ります」
「何故です、ショーは終わりましたよ?」
「気になることがあるので」



それから人が疎らになった頃を見計らいエレベーターで下に降りる。きっと一階のロビーに人は居ないだろう。上の部屋に居た人達は自分の欲求が満たされたのだから、早く帰路に着くはずだ。案の定、ロビーには警備員としているだろう黒服が数人居るだけだった。
気になるというのは、あの鉄骨を渡りきったあの一人。きっと彼はこのまま引き下がらない。引き下がるのなら、もうホテルから金を持って出ていくはずだ。それが無いということは、まだ中に居る。もしかしたら、何か勝負でも仕掛けるのかもしれない。
彼は人間だった。私が会ってきた中では、一番人間らしい。そんな彼が、あれ程自分を苦しめ人を殺した奴らを許すだろうか。敵をとらないでいるだろうか。
気づけばもうすぐ夜明け。その時、エレベーターの扉が開いた。そこから黒服と、何人かに支えられながら彼が出てくる。鉄骨を渡ったときに無かった、頭と手に包帯を巻いて。
彼らがソファーに腰掛け落ち着いた辺りで声をかけにいく。これから面白くなることを期待しながら。




はじめまして、鉄骨渡りさん





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続いちゃったよ、私だけが楽しいシリーズ。








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