アカギが女の子注意!
時系列バラバラ。
カイジに傷があるのに佐原が生きてる。
まさにパラレルワールドである←









「ふぁ……」



眠い。いくら時給がいい深夜のコンビニバイトでも、やっぱ眠い。客が居ないのをいいことに欠伸を隠しもせずする。まあ客が居ても普通にするけど。どうせ気にするやつなんて居ないんだから。
もうかれこれ何度目か分からない欠伸をする。すると自動ドアが開き、なんだかよく分からない音と共に客が入ってきた。いらっしゃいませ、とマニュアル通りに口にする。



(って、うわ!めっちゃ美人だなぁ)



ふと視界の端に白が見えた。その白を見ると、元は髪だった。店に入ってきた客の髪。肩より少し伸びたその髪が、安い蛍光灯の光を反射してる。そして、何より美人。そら男の性だから見てしまう。髪に負けず劣らず白い肌に、ちょっと強気に見える目とか、身長はそれなりにあるけど、それもあるのかスタイル抜群。まるでモデルだ。
しかし美人でもこんなショボいコンビニに来るのか。まあ来るか、24時間営業してる便利な店だし。てか、ちょっと美人さんの買うものも気になるかも。
その美人さんはきょろきょろと店の中を見渡す。何か探しているようだけど、いったいなんだろう。その姿を見ていると、バチッと美人さんと視線が合った。やっぱ美人だな、なんて思ってるとこちらに一歩、また一歩と近づいてきた。え、マジか。



「あの、すみません」
「あ、はい!」
「ちょっと探してるんですけど」



どうやら俺が思った通り、探し物をしていたようだ。商品名が分かれば話は早いのだが。



「あ、物じゃなくて、人を探してるんです」
「人、ですか?」
「はい」



人を探してる、と美人さんは言った。つまりここで働いてる人ってことだよな。じゃなきゃ普通は警察に行くって。
しかしこんな美人さんが探してる人って誰なんだか。まず俺じゃないし、店長もたぶん無いな。西尾さんの友達かも。あ、あとカイジさんが居たな。でもさすがにカイジさんを探してるってのは無いだろ。
とりあえず、その探してるって人の名前を聞いてみることにした。それが一番手っ取り早い。



「ここで働いてる、カイジさんなんですけど」
「……え?」
「伊藤開司です。髪が長くて、顔に傷があって」
「あ、アカギ!?」
「あ、いた」



ゴミ出しから戻ってきたらしいカイジさんは、驚きながらも美人さんに駆け寄っていく。美人さんも片手を少しだけ挙げながら久しぶり、と言っている。つかマジかよ、カイジさんの知り合いなんて。ずるい。てか羨ましい。



「お前いつ帰ってきたんだ!?一週間も消えやがって!」
「ちょっと拉致られて、ついさっき戻ってきた」



っておいおいおい、俺聞いたのが間違いじゃないなら今美人さん拉致って言ったよな。拉致ってお前、誘拐ってか犯罪。



「拉致って、まさかまたアイツらか?」
「うん。着いたらいきなり仕事頼まれて」
「それでなんで一週間も消えるんだよ!」
「だって長期戦だったし。なんていうか、大会?みたいな」
「……まあ、無事ならいいけどよ」



いや良くないだろカイジさん。拉致られて一週間も消えてんだろーが。普通なら今すぐ警察に連絡して犯人逮捕に力尽くすって。しかもまたアイツらか、って言ったってことは知り合いなのか、その拉致ったやつと。もしくは知り合いっていうより顔を知ってるとか。そもそも仕事って、拉致られて仕事ってどんな仕事なんだ。あと大会って何さ。仕事で大会とか意味分からん。
なんとなく、むしろ完全に置いてかれた。もう意味分からん。しかし、この美人さんとカイジさんの関係は気になる。



「あ、あの!」
「ん?」
「えっと、よかったっすね、見つかって」
「まあね。ありがと」
「いや俺はなんもしてないけど……」
「あ、そうだ。カイジさん、まだ仕事あんの?」
「あと30分くらい……」
「なら、待つ。ついでに買い物したいし」



そう言って美人さんはふらり、と店の中を歩き出す。なんか猫みたいだな、気まぐれで。
しかし好都合。カイジさんを呼んで捕まえ、何故か小声で話す。



「ちょっとカイジさん、誰なんですかあの人!」
「あ?あぁ、アカギのことか」
「アカギさんですか……彼女何なんですか?」
「何って言われても……」



困ったようにカイジさんは腕を組んだ。もしや恋人か、と思ったがこの様子では微妙に違うらしい。
カイジさんが答えを出す前に美人さん、もといアカギさんがレジに立つ。ビールが4本とおつまみ少々。それからハイライトを2つ。意外にも煙草を吸うのか、と漠然と思った。そういやこの後カイジさんを待つって言ったけど、どうするつもりなんだろう。
そこで名案が思いついた。



「アカギさん、でしたよね?良かったら裏に来ませんか?カイジさん待つなら丁度いいですし」
「な、おい佐原」
「まあまあ。店長だって、別に嫌な顔しないでしょ」
「けどよ」
「……なら、お願いしてもいいですか?30分だけ」
「ええ、そりゃもちろん!」



もうレジは今裏にいる西尾さんと交代で、休憩になる。裏には店長がいるけど、ちょっとくらいなら話しができるだろう。アカギさんは座ってカイジさんを待つことができて、俺は好奇心を満たすことができる。まさに一石二鳥ってやつだ。
そうと決まれば話は早い。カイジさんは雑誌を出すため店内に、俺は西尾さんと交代、アカギさんと共に裏に入る。そこには店長も居たけど、まあ美人さんだから無下に断ったりはしなかった。カイジさんの知り合いと言うとちょっとばかし微妙な表情はしたけど。
とりあえずアカギさんに椅子を勧め、俺も座る。事前に買っておいたジュースを飲みながらアカギさんに話を振ってみた。



「アカギさんて、カイジさんの知り合いなんですよね」
「まあ、そうですね」
「どうやって知り合ったんですか?あ、別に深い意味は無いんですけど」
「……えーと、言っていいのかな」
「な、何かあるんですか?」
「言ってもいいけど、カイジさんがいいかどうか」



一体どこで知り合ったんだか。まさかヤバいとこじゃないよな、マジで。普通のカフェとかであることを切に願う。



「そういやさっき、あ、聞き耳立てて悪いとは思ったんですけど」
「別にいいですよ」
「あの、仕事するために拉致って、どういうことですか?てかどういう仕事してんですか?スタイルとかいいからモデルでもやってるのかと」
「代打ち」
「へ?だいうち?」
「ま、普通の職業じゃないことは確かだね」



代打ち、なんて初めて聞いた。なんの仕事かと聞けば、やーさんの代わりに麻雀打つのだとさらりと言ってのけた。しかもビールを開けながら。いやんなすんなり言われても。つまり、賭け麻雀みたいなものか。金がかかった麻雀で、普通強い人に打たせて勝ちたい。やる側にしたら絶対に勝ちたい、そんな麻雀。そんな仕事を、アカギさんはやってると言った。マジかよ。
しかもまた、とカイジさんは言っていたからこれまでに何度もやってきたということだ。やーさんが拉致ってまで頼むのだから、アカギさんは相当強いのだろう。



「まあ、麻雀だけじゃなくて賭け事ならなんでもやらされるけど」
「な、なんかすごいんですね……まさかとは思いますけど、アカギさんってそっちの筋ですか?」
「そうだな……別に組に入ってるわけじゃないし。まあ、普通じゃないのは確かだけど」
「けどそれなりに危ない仕事ですよね?給料とかどうなってるんです?」
「負けたら殺されるかもね」
「なッ!?」



アカギさんは煙草に火をつけて平然と言ってのけた。そんな簡単によく言える。店長を見てみろ、もう怖くて話なんか聞いてない。一心不乱にパソコンに売上やらなんやらを打ち込んでいる。触らぬ神に祟り無し、だ。



「けど勝てばそれなりに報酬は出る。今日は、あの人たち羽振りが良かったから二百くらいかな」
「ま、万ですよね、それって」
「うん」



一週間で二百万。単純に一ヶ月で計算したら八百万だ。なんだそれ、目が眩む。
そもそもなんでこんな人とカイジさんが知り合いなのか、とても不思議だ。アカギさんは言わなかったけど、絶対ろくな出会い方はしてないな。カフェとかで出会うとか、絶対無い。
公言しないからカイジさんとの出会いを聞こうとしたとき、タイミングが良いのか悪いのかカイジさんが入ってきた。時計を見ると、確かに30分経っていた。



「それじゃ、お先に失礼します」
「カイジさん、終わったの?」
「あぁ。帰るぞ」
「えっと、サハラさん?でいいのか。ありがと」
「え、あ、いや、気をつけて帰って下さいね」



なんで俺の名前が分かったんだろうと考えると、アカギさんの視線が胸元に行ってしたのに気がついた。ああ、名札だ。考えてみれば単純だった。
出ていく二人を見ていると、アカギさんが袋から一本ビールを取り出しカイジさんに渡していた。それを少し嬉しそうにカイジさんは受け取る。



(なんか、普通の恋人っぽい……)



そこでふと、肝心なカイジさんとアカギさんの関係について聞くのを忘れていた。しまった、と思ったが明日カイジさんに聞けば済む話だ。
俺はまたジュースを飲みながら、早くバイト終わらないかなと心の中で愚痴をこぼした。





気になる二人





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おふざけが過ぎたと反省している。
……カイジとアカギの出会い編とか書きたい。
すみません黙ります。








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