「……なあ」
「ん?」
「お前、さっきから何こっち見てんだ?」



アカギにそう言うと、ハイライトを吸いながらそうかな?と言った。紫煙がゆらりと現れてはふっと消える。
アカギははぐらかしたが、確かに俺の方を見ていた。じっと、たぶん俺にある何か一つを見ていたはずだ。でなければアカギは俺に対して視線なんか向けない。意味が無いからだ。
しかし今回は違う。アカギにとっては確かに意味があること。だから俺はアカギの視線に気がついた。



「何だよ、言えよ」
「そんないきり立つこと無いだろ。ただ見ただけだよ、それを」



煙草を挟んだ指で俺の顔を指した。紫煙がすぐそこを流れる。
ふと顔を触れば、そこには一つの傷があった。あの時の、傷。
そしてアカギはゆっくりと指を動かし耳、そして指へと煙草を動かす。そこには忘れもしないあの夜に出来た傷がある場所だった。



「はっ!何だよ、馬鹿にでもするのか?」
「何でそんなことしなきゃいけないのさ。別にそんなことしないし」
「なら何だよ」
「別に。ただ、気になっただけ」
「は?」
「死線を超えようとして出来たその傷が。死んでもいいとか、死んでやるって考えたその傷が」



そう言ってアカギは紫煙を吐き出す。そしてゆっくりと目を細め、笑った。
アカギはどこかがおかしい。いや、全ておかしいのかもしれない。俺のこの傷を見ても怖いや気味悪いとも思わない。普通のやつらなら、忌み嫌うものをアカギは好む。
初めは何なんだと思ったが、今ではそれでなければアカギじゃないとまで思えるくらいだ。そう考える俺も、十二分におかしいのかもしれない。



「ねえ、カイジさん」
「ん?」
「触っても、いい?」



何を、と聞くのは止めた。何を、なんていうのはアカギの目が語っていたからだ。
俺は大人しく傷のある手を前に差し出す。アカギはそれに触りながら、くつくつと咽を鳴らして笑った。何がおかしいのか俺には分からなかったが、それでもアカギには何か面白いと感じたのだろう。



「ねえカイジさん、あんたも結構なすきものだよね」
「言ってろ。お前だってそうだろ」
「ククク、確かにね。でも、あんたも相当だよ」



また咽を鳴らしながらアカギは笑う。その笑みに見せられた俺は、確かにすきものなんだろうな。





すきもの





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書いといてあれだけど、別にカイジは死のうとか考えてなかったよね。
死ぬ気で生きようとしてた気がする。








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