君は僕の気持ちに気付かないまま大人になった。



「ココ、ココ」



だらし無く開いた口の端からだらだらと唾液がこぼれ落ちる。それを気にするでもなく僕の名前を呼びながら腰を振るのは本能的なそれだ。それに答えるように僕も腰を振ってみせれば、弓のように背中を跳ねさせよがる。掠れた声が耳を刺激してさらに激しく腰を振った。
この行為の先に何かがあるわけじゃない。ただ何もないそれが一体何を築き上げることが出来るのか。あるとするなら、僕の中に出来る穴かもしれない。塞がることのない、けれど些細なことで埋まるかもしれない穴。
くたびれたその体を労るように濡れたタオルで撫でる。それにゆっくりと目を細めありがとうと礼を言う口から、僕は愛を囁かれたことはない。自ら、一方的に囁くことはあるけれど。



「トリコ」
「ん?」
「……好きだよ」



一度目を丸くして驚いたけれどやはり彼は答えなかった。答える代わりに、やはりありがとうと礼を言う。真意が見えないその言葉に苛立ちを覚えながらも僕は手を動かした。





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片想いココと体の関係のトリコ。





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