礼儀よく佇むその小さなけれど大きな違和感を持つそれを手に取った。



「あぁ、それ?可愛いだろ。今商店街で福引きやっててさ、それでぬいぐるみ当たったんだよ。ハスキーっつったっけ?」



黒と水色が入った涼しげな目と尖んがった耳に白と黒の模様。たしか、そんな名前だった気がする。
ぼう、と見ていると万事屋にそのぬいぐるみを取られた。



「なーにじっと見てんのさ。ちょっと銀さん妬けちゃうんだけど」



そう言ってぬいぐるみを自分の顔まで持っていき唇で軽く触れる。まるでキスのように。



「あ、妬いた?ぬいぐるみにキスして、妬いた?ふ、可愛いねぇ……あ、子供みたいなんて思ってないよ。妬いてるのは俺のこと愛してるってことじゃん?嬉しいよ、俺」



笑みを浮かべながらぬいぐるみの手を動かして、まるでぬいぐるみが話しているように錯覚してしまう。



「俺?もちろん愛してる。だってすげぇ可愛いじゃん。どんぐらい?そりゃあ、全部。ま、わかんないよなぁ、抽象的だしな……そだ」



背中を向けて、どこから持ち出したのか鋏を片手に持ってきた。振り返った万事屋は先ほど同様笑みを浮かべている。



「たとえばさ、耳が取れちまっても俺は愛せる」



じゃきん、とぬいぐるみの耳が落ちる。



「目が見えなくなっても、やっぱり愛せる。手足が無くなっても、愛してるし。鼻も、無くなっても平気だ」



ぼとぼとと床に綿が落ちていく。ついにぬいぐるみは原形を留めなくなり、万事屋の手から消えた。



「俺はお前がどんな姿になろうと、愛せる。愛してる、土方」



首にひんやりとした何かが触れたような気がした。





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ヤンデレ銀さん、好きです。





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