(あーあ、また眉間にシワ寄せてるわね青年)



そう思いながら青年の顔を伺った。まあ少し離れたベッドから、窓辺に佇む青年を見てるからたぶん気付かれてないはず。そもそもあんな風にシワを寄せてるんだから、なにかしら考えてこっちなんか気にしてない、か。せっかくの整った顔が台なしじゃない、シワなんか寄せてさ。ま、苦悩する美青年ってのもおばさんからすれば十二分な目の保養になるんだけど。
それはさておき、一体なにをそんなに悩んでいるのやら。たしかに色んなことが周りで起きている。その整理でもしているのかしら。考えてみても青年の考えていることなんて私に分かるわけないんだけど。



「せーねん」
「……なんだよ、おばさん」
「ちょっち、こっちに来てくんね?」



青年に声をかけて、座っているベッドをぽんぽんと叩いた。つまり、隣に座れって意味。青年はため息をつきながらも大人しく従ってくれて隣に座ってくれる。けど眉間にあるシワはそのままだ。



「で、なんの用だ」
「まあ、用ってわけじゃないんだけどさ」
「は?」



何言ってんだコイツ、っていう顔を青年はした。まあ当たり前の反応ね。呼んでおいてそれかよって。
私は青年に笑いかけてから人差し指で眉間のシワをぐりぐりと伸ばす。青年は何をされたか分かっていないらしくされるがまま。指を離すとぱちぱちと瞬きをした。あら、可愛らしい反応。



「な、に」
「考え過ぎは毒だよ、青年。しかもここにシワまで寄せて。まあ悩むなとは言わないけどさ、いいじゃない、たまにはそーゆーの考えなくても」
「べつに、俺は」
「まーまー、ここはおばさんに免じて、さ」



なんだか納得のいかない様子の青年らしく、また眉間にシワが出来ていた。もう、なんのために伸ばしたと思ってんのよ。またシワを伸ばしてやろうかと思ったけど、やめた。代わりに青年の頭を撫でる。小さい子供にやるような、そう、お母さんがやるような。そういや私も子供が居てもおかしくない歳かなあ。そんなことを頭の隅で考える。
青年は頭を撫でている私の手を退かそうとはしなかった。二十歳を越えた青年でもこうしていればただの男の子だ。おばさんから見れば、だけど。
しかし突然青年が動き出した。驚いているといつの間にか青年の肩が目の前に。そして背中には微かな暖かさ。あら、もしかして抱きしめられてたりするのかな、おばさん。



「せ、青年?」
「なぁ、レイヴン。少しだけ、良いか?」
「……青年」
「頼む」



今の青年を突っぱねるほど、私は冷たい女じゃない。それがレイヴン、だ。だから私は青年の背中に腕を回す。
青年は今、なにも考えたくないのだと思う。考えるという行動をしたくない。たぶん、そうだと思う。だから母親に甘えるように、その母親を私と重ねて、そして赤ん坊のようにその母親の温もりに安堵する。はは、大きな赤ん坊だ。
私は首を傾け青年の肩に預ける。辺りはとても静かだった。





静かな夜に








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