土方女体化注意





「女を武器にしない手はないだろ」



そう言った土方は不適に笑っていた。妖艶に、美しく、全ての者を魅了するような。
それでもお前は女だと言おうとして、やめた。何を言っても無駄だと思ったし、それはあいつが一番知っていることだ。痛いほど、その事実を。
俺は小さな瓶のペディキュアの蓋を取った。蓋にある筆に黒く艶のある液体がべっとりとついている。それを調節しながら土方の足に手を伸ばした。



「ん」
「……くすぐったい」
「我慢しろよ。お前が言ったんだからな」



切り揃えられたその爪は俺が手入れしたものだ。塗りやすいように足を持ち直して、筆を滑らせる。薄く白みがかったピンクがあっという間に黒く染まった。
勿体無い、と純粋に思った。けれど、この黒い爪が白い肌に似合っている。
そして知っているんだ。それを、こいつは。



「なぁ」
「ん?」
「なんで足はやって手はやんねぇんだ?」



ふと思いついた疑問を口にするとあいつは含んだ笑みを浮かべながら乾いていないペディキュアに息を吹きかける。それから、一応公務員だからな、と言って爪を眺めた。
そういうものなのだろうか、俺にはよく分からない。今更体裁を気にするのか。あれ程街中を暴れ回っているというのに。いや、だからか。だから、そういうところに気を回さなければならない、と。チンピラ集団と呼ばれているし、副長という立場のこいつなりに考えているのかも、しれない。



「なら足もやめとけば?」
「分かってねぇな、お前」



あからさまなため息をつきながらも笑みを浮かべて俺を見ている。



「普段見えないから、意味があんだよ。こうやって床に上がらなきゃ、見えないだろ?」



艶のある髪が、瞳が、唇が、そして爪が。すべてがこいつを、土方を魅せる。
分かってやがる、こいつは自分のことを、男のことを。



「はは、まったく……お前にはかなわねぇよ」



乾いた爪に触れながら目を伏せた。





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