バキリと嫌な音がした。それが拳の悲鳴なのかそれとも拳が行き着いた先なのか、どっちもか。



「ぎっ……つぅ」
「は、は」



ガランガランと空き缶がそこらじゅうに散らばった。もともと散らばっていたからそんなに大差はない。倒れたカイジさんを見下ろしながら腹に蹴りを入れた。いや、蹴りじゃない、踏んだんだ。柔らかいくせに何だか固い不思議な感触。
蛙を踏み潰したことは無いけれど、たぶん、蛙を潰したときの感じはこんな感じなのかもしれない。



「ぐっ……う、げぇ」
「ははは、……汚ねぇ」



びちゃびちゃと溢れるゲロが床に広がっていった。独特な臭いが鼻をかすめて更に臭いを強くさせる。足を置いていたカイジさんの上にどかりと座った。苦しそうに呻きながらゲロを吐き続けるカイジさんの目は確かにこっちを見ていて、その目がいったい何を訴えかけているかなんて俺に分かるはずがない。
汚い口に自分の口を寄せて貪る。臭いしゲロの残りが不快だった。



「て、め」
「ふふ、カイジさん、今のアンタさ」



カチャカチャとベルトを外す。自分のが終わったら、次はカイジさんのを外して、ずらす。男が二人してナニすんだっていう文句や質問はきっとたくさんあるんだろうけど、今更聞く野暮なやつもいないだろう。
カイジさんをぐっと掴んでもう片方の手は自分をまさぐって。起き上がろうとするカイジさんをじっと見詰めて止めながら荒い息とぐちゃぐちゃと気持ち悪い音だけが聞こえる。



「興奮、してんだろ?」



ちゅうっと吸い付くように口を合わせて、二人して臭い息を吐きながら繋がった。痛くて臭くてただ痛いだけの行為で興奮なんてするもんか。興奮してるのは、カイジさんだけだ。
腰を無理に動かして奥になんて行こうとすれば全身が引き攣るような痛み支配される。やめてくれと叫び出しそうになるのを必死で押さえて、抑えて、自分も腰を振る。ぎちぎちと嫌な音が自分からするなんて、気持ち悪い。
いつの間に体勢が変わっていて、俺の目の前にはカイジさんが吐き出したゲロがあった。臭い、気持ち悪い、糞が。がりがりと床に爪を立てながら気持ち悪さと痛みと中に注がれているだろう熱さに限界を感じて、俺は腹にあった酒を全て吐き出した。





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いわゆるゲロセックスを書きたかった。








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