顔の傷がじくじくと痛む。ああ、まただ。そう思ってアカギさんの部屋に向かう。案の定そこにアカギさんの姿は無くて、顔の傷を片手で押さえながら襖を閉じた。
昔、傷は治らないのだと言われた。治らないのは別によかった、元より気にしていないから。けれどどこか傷付いたような顔をしたアカギさんがとても気になった。
親に捨てられてからの数日間、街をさ迷っていたときだったと思う。腹が減って、堪らず青いごみ箱に飛びついたのだ。隙間から見えたパンのかけらがとても美味そうだった。けれど、突然顔に焼けるような痛みを覚えて、気が付けばこの家にいた。



「捨て子か?」



包帯で巻かれた顔に違和感を持ちながら首を縦に降る。目は包帯のせいで左しか見えない。
声をかけてきたのは白い髪の女の人だった。少ししゃがれた声でそうか、と言った後ここに住むかと言われた。わけが分からないまま、また首を縦に動かす。それから私はここに住んでいる。



「……ただいま」



玄関から物音と小さな声が聞こえた。急いで玄関に向かうと、片手にビニール袋を下げたアカギさんがそこにいた。顔色が悪いのは、きっとまた現れたのだろう。
ビニール袋を受け取り、アカギさんと向き合う。やはり、顔色が悪い。



「お帰りなさい」
「……うん」



アカギさんと出会ったのは怪我の手当てをして貰ったのが初めてだった。歳が近いと理由からなのか、よく話をしていた。けれどどこか影を落とすアカギさんに私は違和感を拭えなかった。
白い髪の女の人は赤木と名乗った。助けてもらったのだと包帯が取れた日にようやく理解し、身の回りのことをさせてもらっていた。
つい気になり私は何故傷が出来たのか、それを尋ねた。



「鬼さ。あんたも近々見るだろうな。心配は要らないよ」



それからしばらく経ち、赤木さんは姿を消した。何故かは分からない。それから私は鬼を見た。アカギさんと一緒に。
それからなんとなく、アカギさんが鬼を呼び出すのだと理解した。鬼が出るのは決まってアカギさんが外出をするとき。私の、鬼から受けた顔の傷が痛むのだ。



「あ、アカギさん、さっき連絡があってもうすぐ着くみたいです」
「東京から来るやつか……さっき会ったよ」



ふらりと頼りなく歩くアカギさんを見送りながら私は得体の知れない感覚に身を震わせた。





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葉→カイジ。
アンナ→アガギ。
涯は捨て子みたいな。
零も入れたかったけど無理でした。
てかよく分からない。








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