庭の中にとても不釣り合いな一軒家が建っている。あそこに当分居なければいけないのかと思うと気分が重くなった。最も、その家の主ほどではないだろうけれど。



「庭に、住む?」



マンサム所長に呼ばれ何事かと思えば突然庭に住めと言われた。意味が分からずおうむ返しに言葉を口にする。何故、今更庭に戻ることになったのか。大人になり、充分似合った生活をしていたはずだ。本音を言ってしまえば、もうあそこに戻りたくないだけなのだけれど。
所長はそんな僕の考えが分かったのか笑いながら違うと言った。任務だ、と。



「お前らと同じようにグルメ細胞を持ったやつが居てな。これがまた、厄介なんだ」
「厄介って……」



所長の話によると、まだ十五の少女らしい。グルメ細胞の力により身体能力が上がり、ついに制御出来なくなるところまで来てしまったようだ。もちろん制御しているのだろうが、精神的が安定していないためそれも無駄に終わっている。職員に世話をさせていたらしいが何人も怪我人が出たようで、同じグルメ細胞を持つ僕が選ばれた、と。
幼い子に一人であの庭に居ることがどれだけ不安か、僕には分かる。あの猛獣の中で、一体どれほど長い時間孤独で居なければならないのか。
身体が震えるのを抑えながら、具体的に何をしてしけばいいのか所長と話を進めていく。任務をやる、と解釈した所長は嬉しそうに話を進めていった。



「ま、任務と言っても一緒に住むくらいだ。目的は力のコントロールに精神的な不安を取り除くことだけだしな」
「本当に、それだけなんですか?」
「ああ。それに他にも任務を任せたいし、近くに居てもらったほうがこっちが楽だ!なに、任務と言ってもメインはそっちだからな」
「はぁ……分かりました」
「じゃあ、トリコを頼んだぞ」



家の周りに毒を巻き、猛獣を近づけないようにする。弱い毒だが、猛獣が嫌いな匂いを混ぜておいた。これでしばらくここは安全だろう。
扉の前で足を止め、三回ほどノックをする。中からは確かに人の気配はする。二階の、奥の部屋からだ。どうやら動く気は無いらしい。しかたなく扉を開け、中に入る。
想像していたよりは綺麗に片付けられているが、血液がところどころについていた。獣のものなのか、彼女のものなのか定かではない。
一階を一通り見たところで、二階に足を向ける。気配は相変わらず動かない。階段を上がりきり、手前から順に部屋を確認していく。使われてない部屋も多く、建てた当初のまま時が止まっているかのようだ。
そして、最後の部屋。やはり動く気はないのだろう。ドアノブに手をかけ、手前に引いた。中は薄暗く、カーテンが閉めてある。その部屋の奥にあるベッドの上に、彼女は居た。



「初めまして、トリコ」


声をかけても彼女、トリコは動かない。いや、震えていた。薄暗い部屋だが、僕にははっきりと見える。
青い髪に、似合わない大きなシャツ。何より、猫のような瞳が印象的だった。くりくりと大きな瞳が僕を真っ直ぐ見ている。



「だ、れ」
「ああ、ごめん。僕はココ」
「ココ……?」
「突然だけど、これから君と一緒にこの家に住むことになったんだ」



くりくりと大きな瞳が驚いたように大きく開く。驚くのも、無理はないだろう。あまりに突然だ。僕だって驚いたんだから。
一本トリコに近づくが、身体が揺れた。怖がられるのには慣れていたつもりだが、やはり少し傷付くものだ。足を止め、この距離を保ったまま話を続ける。



「詳しいことを話したいんだけど、僕もどう説明したらいいか分からないんだ。そうだな……とりあえずご飯、食べない?時間的にも夕飯だろ?」
「え……」
「僕もお腹も減ってるしさ。下で準備してるから、落ち着いたらおいで。ゆっくり話そう」





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魔が差した。
青年×幼女みたいな組み合わせが好き。
犯罪臭めっちゃするけど。








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