別に、人をころしたいとか、そんなんじゃないんです。ただ、俺って、ほら、器用だから。ニュース番組とか新聞とか読んでるとわかるんですよ。要領良い人のころしかた。この事件の犯人は、ころしてから、凶器はあそこに隠して、こうすればよかったのにって、思ってたっていうか、解ってたんです。いつから?うーん、わからないんですけど、小学生くらいかな。原因ですか?言ったでしょ、俺って器用なんです。
そんな俺にもころしたい人が出来たんです。ね、これって凄いことじゃありませんか。本領発揮、ってやつじゃないですか。ついに。相手は、学校の先輩でした。その人、ちょっと頭おかしいっていうか、お坊ちゃんなんで、世間知らずだし、頑固だし、俺が先輩のこと好きって、思い込んでたんですよ。それを疑おうともしないんですよ。男同士なのに。あれですよ、友達の好きじゃ、ありませんでした。終止好き好き五月蝿いし…きもちわるいでしょ、フツー。
ナイフは、路地裏にいた変質者に貰いました。本当はお金要るらしいんですけど、ころしたい人が出来たんですって言ったら、ただでくれました。面白いと思ったんじゃないですか。なんか変な臭いしたし、クスリやってたのかも…。とにかく、ただで貰いました。そいつの名前?知りませんよ。変なオヤジです。
今すぐころしてやろうなんて思ってませんでした。いつか。いつか、何かあったときでよかった。ナイフはベッドの下に隠してありました。時々、取り出して、触ってみたりとかはしてましたね。だって、なんか落ち着くんです。安心するような、ぞわぞわするような、でもなんか虚しくなるような…ちょっと、笑わないで下さいよ。俺、それがないと生きて行けそうに無かったんです。泣きそうになるんですよ。神童先輩と居ると。不思議、ですよね。
その神童先輩が家に来たとき、偶然、そのナイフを見つかったんです。なあ、これなんだって、先輩が聞くんです。俺覚えてます。あのときのこと、ぜんぶ。ナイフですよって。そしたら、なんでこんなものって、泣きそうな顔になるんですよ。あ、先輩って泣き虫なんですけど。で、そのとき思ったんです。この人、俺のこと、本気で好きなんだなって。あんたをころすためですよって、言いました。あんたをころすためって、言ったんです。そしたら、泣かないんですよ。そっか、って言って、狩屋はいいやつだもんなって言うんです。意味わかんないでしょ。これ、言うの恥ずかしいけど、狩屋はやさしくて、かわいくて、俺の大切な人だから、そんなことしないんだって。俺、やさしくない!いいところなんてひとつもない!先輩に好かれる要素なんて、ない…俺はなにも、持ってない。俺、やっぱり、器用なんかじゃないです。神童先輩はちょっと、重たすぎました。こわかったんです。その後、はじめて人前でわんわん泣きました。
先輩に、ナイフを持ってて、って言いました。持っててくださいって。そしたらあんたをころさずに済みますから、お願いしますって。その時の先輩の顔、きれいでした。男にこう言うのおかしいかもだけど、本当にきれいでした。何もかも、受け入れてくれるんじゃないかと思って。今にも消えちゃいそうな顔で、微笑んでました。明日になったら、何か変わるんじゃないかって…もうちょい素直になって、ほんの少し、近づけるんじゃないかなあって思いました。
先輩、ごめんなさい。俺、先輩のこと、すき、だったんです。あの、信じて貰えないかもだけど…苦しめて、ごめんなさい。
死に顔ですか。見ましたよ。安らかでしたけど、泣きそうな顔していました、とても。なんで死んじゃったんですかね、はは、俺のせいですよね。ほんと…ばかですよ。俺も先輩も、ばかでした。なんで俺をころしてくれなかったんだって、聞きたいです。











(俺とあなたはひとつにはなれない)

thx.joy


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