南沢の中学時代を思い返せば、必ずといって良いほど神童拓人の影がちらつく。


何故中学時代って、1枚の葉書が届いたからである。お元気ですか、会いたい、そんな他愛もない内容の、綺麗な海の写真の葉書である。切手が音符柄なのを神童らしいと思った。回りまわって来たのか、消印は1年前のもので、日に焼けていた。
「神童、拓人」
ぽつりと呟いてみる。久しぶりに呼んだ名前に、口が驚く。しんどう、もう一度呟くと、懐かしくて笑みが零れた。


サッカー漬けだったあの時、どれだけの時間をあいつと過ごせたんだろう。現実には、一瞬だった気がする。神童よりも同級生やクラスメイトとの時間が多かった。しかし強く、神童のことが思い出される。焦がれて、息が苦しかった。そんな感情、南沢には無縁なものだった、はずだった。愛しい、そばにいるだけでいい。そんな、つかの間の青春。そんなものを思い出したからって、何をするでもないけど。夏だからな、と呟いた。夏はつい、郷愁に駆られる。きらきらした、蝶の標本みたいに、それを時折目に留めて、目を細める。あまりにも輝くものだから、仕舞っておくのがちょうど良いのだ。きっと、14の自分は、あいつを、そう、拙いけれど、愛していた。











thx.joy


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