ぱりぱりに乾いた包装紙は、触るだけで大袈裟な音を立てた。そんなに大したものも入っていないくせに。3月とはいえまだ朝は肌寒い。マフラーしてくりゃよかった。袖口を精一杯伸ばして、身を縮こまさせる。
葵ちゃん、おはよう。これ、先月のお返し。そう笑って言えばいいんだよな。ぶつぶつと口のなかで唱えながら、寝ぼけた頭はふわふわと眠気を誘う。昨日、寝れなかったんだよなあ。どれもこれも、あのピンク頭の女みたいな先輩…要するに、霧野先輩が変なアドバイスをしてくるからだ。
「マサキくん!」
「うわっ!」
背中をばんと押されよろめくと、微かに石鹸の香りがした。大成功ね、おはよう、と得意気に葵ちゃんが笑った。素朴な石鹸の香りは、彼女らしいと思った。
「もう、びっくりした」
「ごめんごめん」
あ、そうだ言わないと!くるりと向き直るとうわあ、緊張してきた。
「あ、葵ちゃん」
「ん?」
「あの、これ!」
へ?と間抜けな顔をして包みを受け取った彼女は不思議そうな顔で一瞬思案し、
「ああ、ホワイトデー?」
そうだよ、忘れてたの?どきどきしたのが馬鹿みたいじゃないか。
「うっかり忘れちゃってたよ、だって世間の男子はどうでも良さそうにしてるじゃない?」
「いや、確実にみんな気にしてるよ」
特に剣城くんとかさ。確か手作りするって、言ってた気がするし。その手作りに勝つために、学校に一番乗りで待ってたんだけど。
「ありがとうマサキくん。ふふ、まるで告白みたいね」
告白みたいもなにも、告白だよ。その中に入っているのは、お礼と俺の気持ちだ。パステルの水色は葵ちゃんによく映えて、緊張したように腕の中に存在していた。










thx.joy


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -